恋の練習のはずが、若手社長の溺愛に蕩かされています~声フェチ女子は断れない~

「玲音さん以外……こんな反応、しません」

 だからはっきり言った。

 頬は赤いし、鼓動も速いけれど、素直に伝えたいと思ったからだ。

「そうか。それなら好都合だ」

 玲音は郁の返答を聞いて、もっと笑みを濃くした。

 手を持ち上げ、郁の頬に触れた。大きな手で優しく包み込む。

「これからも恋人の触れ合いをさせてくれるか? もちろん練習などではなく」

 顔を寄せ、郁の瞳を間近で見つめて囁く。

 郁の胸は一番奥から震えた。

 声より内容が胸を打ったからだ。

「……はい」

 今度も素直に返事ができた。

 喜びに自然と目を細めてしまう。

 互いにこういう受け取り方ができるなら、練習ではない触れ合いは、もっと幸せなものになるだろう。

 郁の受け入れに、玲音は愛おしげに微笑む。

「これからは今まで以上のことをするから……覚悟してくれよな」

 潜めた声が、郁のくちびるの上をくすぐる。

 そして合わせられたくちびるは、玲音こそが、郁に特別な声と言葉をくれる唯一の人だと伝えてくれた。


(完)