恋の練習のはずが、若手社長の溺愛に蕩かされています~声フェチ女子は断れない~

「い、いえ……大丈夫……です……」

 刺激の強さと、変な反応を晒した羞恥を感じつつ、郁はなんとか返事をした。

「無理をするな。無事に降りられたら医務室へ行こう」

 だが風早が喋れば、郁のなけなしの平常心はさらに減る。

 おまけに心配する響きは、普段よりさらにワントーン低めで、艶が増して聴こえた。

 数分後にエレベーターが動き、やっとドアが開いたときには軽くふらついたくらいだ。

「やはり具合が悪そうだ。医務室へ運ぶぞ。少し我慢してくれ」

 郁の体を風早は軽々と抱き上げた。医務室のほうへ向かう。

 彼にお姫様抱っこされた事実だけでなく、あの声が密着した体から直接聴こえることに、郁の意識はもう飛びそうだ。

(今日……人生の運を使い果たしたのかもしれない……!)

 揺れる意識の中で思った。

 でも別の心配が湧いた。

(こんな反応になった理由、聞かれたらどう説明すればいいの……!)

 まさか「あなたの声が好きだから過剰反応しました」とは言えない。

 お姫様抱っこで医務室に入る郁は、大ラッキーと大ピンチを噛みしめた。