「でも、どうして職場では標準語で話してるんですか?」
「そんなん、恥ずかしいからに決まってるやろ」
「え? どうして恥ずかしいんですか? 私は係長の関西弁、すっごく好きですよ。ずっと聞いていたいって思うくらいには」
「……宮本さんのそれって、素なん?」
「え?」
「そうやとしたら、厄介な子に秘密を知られてもうたわ」
ため息をはきだした係長は、また項垂れてしまった。
どういう意味か分からないけど、どうやら係長は、職場では関西弁を話せることは秘密にしたいらしい。
「あの! 私、係長がゲーム実況の京本さんだってこと、絶対にバラしたりしません! 秘密にします。もちろん、関西弁を話せるってことも誰にも言いません! だから、その……」
係長に“厄介な子”って言われてしまったことがショックで、つい声を張りあげてしまった。
……絶対に誰にも言わないから、どうか信じてほしい。
「ごめんな、意地悪してもうた」
テーブルの上に落としていた視線を持ち上げれば、申し訳なさそうに眉を下げた係長が、私の頭に手を伸ばしてきた。ぽん、と軽く撫でられる。
「宮本さんがあんまり真っ直ぐに褒めてくれるから、気恥ずかしくなったんや」
「だって、本当に好きなんですもん……」
「あー、分かったから。それ以上は堪忍してや」
「……ふふ」
「あ、笑うたな」
「すみません」
照れている係長がかわいくて、つい笑みを漏らしてしまった。
私が笑ったのを見て、係長も安心した様子で微笑んでいる。



