その声で魅了して。~イケメン寡黙上司の裏の顔は×××でした~



「お、お疲れ様です」
「……ああ、お疲れ」

 橋本係長はいつも通りの無表情、だけど……その顔がわずかに強張っている気がする。

 それに、どこか気まずい雰囲気が流れているのを肌で感じた。
 流れる沈黙に耐え切れなくなり、私のほうから口火を切る。

「えーと……係長は、こんな時間にどうされたんですか?」
「スマホを忘れたから、戻ってきたんだ。宮本さんは残業か?」
「はい。今日中に終わらせたい仕事があって」
「そうか。差し入れにと思って自販機で買ってきたんだが……すまない。落としてしまった」

 どうやら係長が手にしている缶コーヒーは、私のためにわざわざ買ってきてくれたものらしい。

「えっ、わざわざすみません。貰ってもいいんですか?」
「だが、落としてしまったものだぞ」
「全然かまいません」
「そうか……?」

 中身に支障はないし、何より、係長が私のために買ってきてくれたっていう、その心遣いがすごく嬉しい。

 係長に対する苦手意識は完全にはなくならないけど……係長が優しくて尊敬できる上司っていう認識は、きっとこれからも変わらないんだろうな。