その声で魅了して。~イケメン寡黙上司の裏の顔は×××でした~



「宮本さん」
「っ、はい」

 資料作成に集中していたから、背後まで近づいていた人物に気づくのが遅れてしまった。
 慌てて振り返れば、声をかけてきたのは橋本係長だった。

 完璧に着こなしたスーツ姿に、すらりと引き締まった体躯。指通りの良さそうな艶やかな黒髪。

 最近テレビに引っ張りだこの若手俳優のように精悍な顔立ちをしているが、とても寡黙で業務に必要なこと以外はほとんど話しているところを見たことがない。だけど冷たいわけでもない。

「この資料、よくできていた。だが、最後のページだけ分かりにくいな。もう少し文量を少なくして、製品の情報を表にしてまとめてみるといい」
「分かりました。修正しておきます」
「ああ。……宮本さんの資料は丁寧で見やすいから、安心して任せられる。頼りにしているが、無理はするなよ」

 橋本係長は、ほんのわずかに口角を上げて労いの言葉をかけてくれると、自分のデスクに戻っていった。

 ――こんな風に部下を気遣ってくれる優しい上司の橋本係長は、当然、社内でも女性社員から密かに人気を集めている。

 昨年まで同じ営業部にいた同期に、部署移動になったことを伝えた際、橋本係長の下で働けて羨ましいと言われたのは記憶に新しい。

 私も、橋本係長のことは上司としては尊敬しているけど……ほんの少しだけ苦手意識があるのも事実だ。

 だって、何を考えているのかよく分からないから。
 対面すると、どうしても緊張してしまう。