『完璧な姉の身代わりだったはずなのに、君じゃなきゃダメだと言われるまで』(「好きな人の妹とつき合う僕ってずるいですか?」改稿版)

 翌日、磐崎姉妹は学校を休んだ。焦燥感に焼かれながら送ったDMの返信が来たのは、放課後だった。

『夕方4時、駅前のマックで待ってる』

 部活をサボって駆けつけると、そこには苺梨だけでなく、私服姿の京美先輩も座っていた。

「舜右くん、昨日は負けちゃってごめんね」

 先輩の瞳は少し赤かった。そして、信じられない言葉を口にした。

「私ね、嫉妬してたの。苺梨に舜右くんを紹介したの私なのに……二人が楽しそうにしてるのを見て、胸がモヤモヤして、試合に集中できなかった」

 頭の中が真っ白になる。あの完璧な憧れの先輩が、ボクを、好き……?

「お姉ちゃん、嘘でしょう……?」

 苺梨が絶望に染まった目で立ち上がる。

「ごめんね、苺梨。でも、受験勉強に入る前に、ちゃんと舜右くんに伝えたかったの」

 苺梨はボクを見て、ポロポロと大粒の涙をこぼした。

「センパイ……知ってたよ。センパイはお姉ちゃんが好きなんだよね。嘘がつけない、真っ直ぐなセンパイが大好きだった。……だから、お姉ちゃんと付き合って。アタシのことは、もう気にしないで」

 それが、彼女の精いっぱいの強がりだった。苺梨はそのまま店を飛び出していった。

「行って、舜右くん」

 京美先輩の静かな声に背中を押され、ボクは、今度こそ自分の足で、苺梨を追いかけて走った。

 近くの公園のベンチ。小さく丸まって泣いている苺梨の隣に滑り込む。

「どうして……お姉ちゃんのところに行かないの?」
「苺梨を、一人にできないから」

 そう答えたボクに、苺梨は涙を拭って切なく笑った。

「優しいね、センパイ。でも、アタシにとって、センパイもお姉ちゃんも世界で一番大好きなの。二人がすれ違うのは嫌。……アタシのことは、忘れて」

 夕暮れの街へ消えていく彼女の後ろ姿を、ボクはただ見送るしかできなかった。自分の本当の気持ちが、まだ見えなくて。