「つき合ってほしいんだけど、いいかな?」
昼休みの校舎裏。木漏れ日の中でそう微笑んだのは、一つ上の先輩であり、この学園の誰もが憧れる完璧なアイドル・磐崎京美先輩だった。
心臓がうるさいくらいに跳ねる。だけど、世界が一瞬でバラ色に染まった直後、先輩の背後からおずおずと小さな女の子が現れた。
「よかったね! ねっ、苺梨(まりん)」
「え……?」
1年1組、磐崎苺梨。吹奏楽部でフルートを吹いている、ボクの後輩。
赤 くなった顔を伏せ、涙目でボクを見上げる彼女の肩を、京美先輩が楽しそうに叩く。
「じゃあ、あとは若いお二人で。妹をよろしくね、舜右(しゅんすけ)くん」
イタズラっぽくウィンクして去っていく先輩の後ろ姿を、ボクはただ呆然と見つめるしかなかった。それが、ボクと苺梨の「おままごと」みたいな恋人ごっこの始まりだった。
部活の帰り道、夕陽がオレンジ色に染める廊下を、苺梨がパタパタと走って追いかけてくる。
「センパイ、いっしょに帰りましょう!」
「あ、うん……」
つき合い始めて一週間。最初はあんなに恥ずかしがっていたのに、付き合ってみた苺梨は驚くほど明るくて、ひたむきだった。
ボクの心には、最低な下心があった。苺梨の隣にいれば、いつか憧れの京美先輩と近づけるかもしれない――そんな打算。自分を卑怯者だと自嘲しながら、ボクは彼女の無邪気な笑顔に、曖昧な相槌を打ち続けた。
別れ道で「また明日!」と手を振る苺梨の後ろ姿。その瞬間、彼女が一瞬だけ見せた、泣き出しそうな寂しい横顔に、その時のボクはまだ気づいていなかった。
昼休みの校舎裏。木漏れ日の中でそう微笑んだのは、一つ上の先輩であり、この学園の誰もが憧れる完璧なアイドル・磐崎京美先輩だった。
心臓がうるさいくらいに跳ねる。だけど、世界が一瞬でバラ色に染まった直後、先輩の背後からおずおずと小さな女の子が現れた。
「よかったね! ねっ、苺梨(まりん)」
「え……?」
1年1組、磐崎苺梨。吹奏楽部でフルートを吹いている、ボクの後輩。
赤 くなった顔を伏せ、涙目でボクを見上げる彼女の肩を、京美先輩が楽しそうに叩く。
「じゃあ、あとは若いお二人で。妹をよろしくね、舜右(しゅんすけ)くん」
イタズラっぽくウィンクして去っていく先輩の後ろ姿を、ボクはただ呆然と見つめるしかなかった。それが、ボクと苺梨の「おままごと」みたいな恋人ごっこの始まりだった。
部活の帰り道、夕陽がオレンジ色に染める廊下を、苺梨がパタパタと走って追いかけてくる。
「センパイ、いっしょに帰りましょう!」
「あ、うん……」
つき合い始めて一週間。最初はあんなに恥ずかしがっていたのに、付き合ってみた苺梨は驚くほど明るくて、ひたむきだった。
ボクの心には、最低な下心があった。苺梨の隣にいれば、いつか憧れの京美先輩と近づけるかもしれない――そんな打算。自分を卑怯者だと自嘲しながら、ボクは彼女の無邪気な笑顔に、曖昧な相槌を打ち続けた。
別れ道で「また明日!」と手を振る苺梨の後ろ姿。その瞬間、彼女が一瞬だけ見せた、泣き出しそうな寂しい横顔に、その時のボクはまだ気づいていなかった。


