笑顔の可愛いキミは、俺にとって高嶺の花


「えー!先輩ってそんな感じなんだ!?」
「うん、ちょっと変わってるよね」
「確かに〜でも一目惚れして即アタックして付き合うってなかなかないよ〜。よっぽど香菜のこと好きだったんだね」
「……どうかな」

 部室の教室では部員の女子たちが和気あいあいとガールズトークを繰り広げていた。
 その隅で俺は台本を書き上げながら、視界の隅に時たま入る彼女の顔を見つめてはバレないように視線を落とす。
 
 香菜はとにかく笑顔が可愛い。
 入部体験早々、その可愛さに部の先輩が彼女に猛アタックをかけてしまうほどに、彼女の持つ愛らしさは周りを魅了していた。
 
「亮太、かけたか?」
 
 向かいに座っていた短髪の男子生徒は俺の手元に置かれた台本を覗き見る。

「あ、はい」
 香菜の彼氏であり、俺の先輩でもある山下先輩。
 演劇部内では演出班のリーダーだった。

「よし、じゃあこれをベースに今回は作っていくか」
 先輩は俺の書いた台本を持って彼女の元へと向かう。
 友人と話しているところを遮り、独占するように彼女を撫でる。

「……。」

 見たくないものから目を逸らすように、俺は教室の空を見上げた。
 胸のモヤモヤと反するかのように、今日の空は雲ひとつなく快晴。
 何もかもが眩しい。
 俺にとって香菜は高嶺の花だった。