溺れるほどの愛を君に

すると、星良ちゃんが何かを思い出したように、あ、と声を漏らした。



「ごめんね、ひまり……あたし、先生に職員室からプリントを持ってきてほしいって頼まれていたことをすっかり忘れちゃったの……先に行っててくれる?」

「うん! わかった!」

「場所は分かる? 迷子にならない?」

「もうっ! 子供じゃないんだから! 場所は分かるし、大丈夫だよ?」

「心配なのよ……じゃあ、行ってくるわね」



職員室に向かう星良ちゃんを見送りながら、一人ため息をこぼした。

あんなこと言っちゃったけど……ちょっとだけ行き方があやふやなんだよね、あはは……。

星良ちゃんの言った通り、迷子になっちゃうかも……。

ううん、迷子にならないように頑張ろうっ……!

そう張り切って、急ぎすぎたのがいけなかったのかもしれない。



「……っ、!?」



階段を降りようとして、床で滑ってしまったのだ。

もうっ……! 私のバカ! ドジ!

なんで急ごうとしちゃったんだろう……。

目の前に広がるのは、灰色の階段たち。

ああ……せっかく華の高校生活が始まったっていうのに、私はこんなドジをして灰色に染めちゃうんだろうなあ……。

そんなことを考えながら、目をつぶった。