最強の王子は花売り娘に恋をする

斥候が相手の軍が射程圏内に入った事を合図してきたので、風の魔法の使えるものは各自ひと箱の紙の鳥と国境を塞いであった岩をバタール軍に向けて吹き飛ばした。

7万5千の紙の鳥が騎馬兵の顔や歩兵の顔、馬の顔に向けて飛ばされた峡谷は紙の鳥で真っ白に埋め尽くされた。

フレデリックは土魔法の使えるものに土偶をそこここに湧き出るように作らせて自分の作った土偶はバタール軍の20台の大砲の砲身に忍び込ませた。

紙の鳥が落ち着くと相手の総司令官が“打て~”と言って大砲の一斉射撃を命じた。

当然すべての大砲はその場で爆発した。

砲手はもちろんの事その近くにいた兵士たちの被害は大変な物だっただろう。

フレデリックは4年前の若造ではない。

相手にも死人が出ないようにと気遣う事はしなかった。

シュバイツァー王国民いやジュリエッタを守るために徹底的に潰すと決めていた。

キメラ帝国は4年前にも侵略してきてまだ賠償金も払い終わっていないのに、バタール軍の威を借りてまた攻め込んできたのだ。

国王も騎士団総長の叔父も腹に据えかねていた。

”今回は徹底的にやれ。キメラ帝国は滅ぼす“と国王は言ったのだ。

バタール軍は乱れに乱れていた。

シュバイツァー王国軍は皆乱れ一つなく、水魔法を使うものが前に出ると大人の拳大の氷のつぶてを降らせたり、火魔法を使うものは騎馬の前に火炎を落としたり今回はその炎で焼き尽くした。

まるで地獄絵図のようだったが誰も動揺していなかった。

フレデリックはバリアーを張り続け飛んでくる矢や雷を防いでいた。

雷を打ち下ろしている魔法騎士がどこにいるかわからないのだ。

その時デレクが

「フレデイ、あそこだあの大きな楡の木の下に騎士が5名ほど固まって一人の男を守っている」

「わかった。決着をつけて来る」

そう言うとフレデリックはその魔法使いの方へ馬を駆けて行った。

大きな木を後ろからやって来ていたイワン総長が焼き払った。

魔法使いを守っていた騎士達にも火がついて転げまわっている。

その魔法使いは決して強気なわけではないようだ。

震えながらフレデリックに雷を落とそうとしているがなかなか命中しない。

一度腕をかすったがフレデリックは土魔法でその男の周囲に土で壁を作り視界を防いだ。

自分は安全な位置にいて5人の騎士に守られながら雷や火魔法を放っているその男がフレデリックは許せなかった。

その魔法使いの所に行くと土魔法を消して馬を降り剣で勝負しようと言ったフレデリックに対して腰を抜かしたようで、戦意を完全に喪失していた

魔法を使いすぎて魔力切れを起こしているのかもしれない。

後ろにいたイワン総長に

「叔父上こいつどうしたらいい…」

と言いかけたら叔父が突然その男に火を浴びせた。

すさまじい悲鳴を上げてその男はあっという間に黒焦げになった。

「戦場で敵に背中を見せるとは何事かっ!お前に向けて魔法を仕掛けようとしていたぞ」

「すみません、助かりました」

「さあ、敵の総大将がどうなったか見に行くぞ」

「はい、さっきここに来る前に総大将の死亡は確認しました。騎馬の一番前にいたはずです。騎馬は全滅しています。歩兵も生き残っている方が少ないと思います」

「叔父上僕はこのままキメラ帝国の帝都の王城に攻め込んで王族をすべて捕縛したいと思います。多分バタール軍の参謀も王城にいるでしょう」

「わかった。俺は国王に報告してから後を追う。バタールの戦士で捕虜にできるようなものはいないからなキメラ帝国の王城にいるバタール帝国の参謀を全部ひっ捕まえろ。そしてキメラ帝国の王城にシュバイツァー王国の王旗を掲げてこい」

「了解です。ジュリエッタに報告だけしておいてください。もう少し掛かると…」

「わかった、わかった」

呆れたように笑うイワンに、フレデリックは顔を赤くしながらも

「きっと心配してるから…」

と小さく呟いた。