最強の王子は花売り娘に恋をする

ジュリエッタだ。庭からジュリエッタが走って来た。

門番は門を開けてくれた。

でもフレデリックは動けなかった。

夢を見ているように頭が真っ白になりジュリエッタがフレデリックに向けて走って来るのをふわふわした気持ちで見つめていた。

ジュリエッタがフレデリックの胸に飛び込んで来て、我に返った。

「ジュリ、ジュリ、やっと会えた。顔を見せてジュリ!」

フレデリックの胸の中でいやいやをするように顔を横に振る。

ジュリエッタはフレデリックに泣き顔を見られたくなかった。

フレデリックの腕の中で彼の匂いに包まれて泣いていた。

会いたかった。どんなに恋焦がれていたかフレデリックの顔を見て思い知った。

エドガーも祖父母もフレデリックの事は忘れろと言う。

でもジュリエッタにフレデリックを忘れるなんてできない。

フレデリックは廃嫡覚悟で王位継承権を返上して王宮を出てしまったらしい。

今は商会の護衛をしていると言う事と、護衛で色々な所に行った場所の様子を楽しく手紙に書いてきてくれるのだ。

そしてどの手紙の最後には、必ず“ジュリ、愛してる。フレデイ”と書いてあるのだ。

つい最近になってやっとフレデリックの手紙やマリアや王妃様の手紙を渡してもらえたのだ。

ジュリエッタは毎日毎日フレデリックの手紙を読み返している。

どれもみな暗唱できるほどだ。

フレデイの手紙や花に付けてくれていたカードは、ジュリエッタの宝物なのだ。

今ではすっかり健康を取り戻したジュリエッタは、伯爵家の領地の屋敷の庭で花や薬草を育てている。

花や薬草に囲まれていると、シュバイツァー王国の市場で花屋をやっていた幸せな日々を思い出す。

エドガーとフレデリックと3人でジュリエッタの作った料理を美味しい美味しいと言って食べるフレデリックの笑顔を思い出すのだ。

幸せだった時間を…

フレデイの優しい笑顔を…

エドガーが大口を開けて笑い転げる姿。

父と母とエドガーと4人で暮らしたあの家に自然にフレデイが溶け込んでいた。

王子様でもない私のフレデイ。

優しくて強い思いやりに溢れたフレデイ。

そんな彼を忘れるなんて絶対にできない。

王位継承権を捨ててまでジュリエッタを求めてくれるフレデリックの想いに応えたいと、祖父母とエドガーに懇願している。

エドガーはフレデリックがジュリエッタを守ってくれなかったととても怒っているのだが、それは何も言わなかったジュリエッタにも責任があるのだ。