最強の王子は花売り娘に恋をする

フレデリックは少し息をついて気持ちを落ち着けてから続けた。

「僕と一緒にいるよりもエドガーと花屋をやっていく方がジュリの幸せなのかもしれないけれど、僕はどうしてもジュリを諦める事ができないんだ。自分の立場が心底腹立たしい。せめて第2王子だったならと思うよ。でもこの立場は変えられない。ジュリお願いだ。僕の側にいて一生僕の側で笑っていて欲しい。ジュリとエドガーは必ず僕が守るよ。約束する」

「でも私達平民よ。貴族じゃないのよ。王妃様になるなんて誰も認めないし無理だわ」

「それは僕が考える。ジュリは僕と結婚して僕の立場ごと受け入れることができるかどうか考えて返事して欲しい。僕にはジュリが必要なんだ。君を失ったらきっと僕は腑抜けになってしまう」

「まあ、この国の最強の王子様が腑抜けになってしまったら困るわね」

「じゃあ、返事はOK?僕の側に居てくれる?ずっと死ぬまで一緒に…愛してるんだ」

「でも、王妃様なんて無理だわ」

「今すぐ王妃になるわけじゃないよ。まだ何年も先の話だ。誰も王妃になるように生まれてきたわけじゃないんだ。僕の義母さんだって最初は僕の母の侍女だったんだよ。そして母は男爵の娘だったんだ。大丈夫だよ。ジュリならなんだってできるようになるよ。たった16歳で花屋を見事に経営してるじゃないか。王妃になるより難しいよ」

「あはは、フレデイほんとにおもしろいわね。王妃様になる方が何倍も何十倍も難しいに決まってるわ」

「そんな事はないよ。王妃は周りにサポートしてくれる者が沢山いるんだ。でも花屋はジュリ一人の才覚で経営しなくちゃいけないだろ?そっちの方が大変だよ」

「フレデイって本当に優しいのね。でも私ひとりじゃ決められないわ。エドガーにも聞いてみないとエドガーだって今よりずっと立場が変わってくるわ。最終的に王妃の弟で国王の義弟という重い立場になるのよ。今のようにのびのびできないわ」

「考えてくれるんだね。ジュリは僕の側に居てくれる事を考えてくれるんだね」

「うん、私もフレデイが大好きだから。フレデイがもっと気楽な立場なら良かったけれど、今の立場だから今のフレデイがいるのよね、どれを無かった事にしても今の私の大好きなフレデイになっていなかったと思うもの」

「ジュリ…ありがとう、ありがとう。本当にありがとう」

そう言うとジュリエッタを腕の中に閉じ込めて最強の王子は静かに涙をこぼした。

ジュリエッタの言葉が嬉しかったのだ。

今のフレデリックを肯定してくれるジュリエッタが愛おしくありがたく体中のすべての細胞がジュリエッタの愛を求めて叫んでいるようだった。

最強の王子と言われて周りのみんなに距離を置かれ孤独な日々を耐えてきた事もすべて報われたように感じて、心の重荷が開放されていくようだった。