最強の王子は花売り娘に恋をする

デレクもキメラ帝国が侵攻してきた時はフレデリックのすぐ後ろに居て何かあれば自分が身代わりになれるように備えていたのだが、そんな気遣いは不要だった。

フレデリックの強さには両軍ともが驚愕した。

デレクはそんなフレデリックが自慢だったが、それ以降の彼の苦悩もよく理解していた。

最強と言われて皆が遠巻きにするのをデレクは腹立たしく感じていた。

フレデリックは心の優しい王子なのだ。

だから、シュバイツァー王国軍には怪我人の一人も出さないように、その上敵国のキメラ帝国軍にもせめて死人は出さないようにと気を配っていたのだ。

そんな事を知る由もない両軍の騎士達はただ最強の魔法使いだとフレデリックを恐れた。

フレデリックはそんな周りの状況にだんだん笑顔を無くしていった。

この頃は無表情に感情の起伏も見せないようになってしまい、余計に周りの者たちの恐怖を誘った。

最強の氷の騎士と呼ぶ者もいる。

誰も本当のフレデリックを見ようとしない。

それがこの1週間余り氷が溶けかかっているようだ。

なぜか優し気な雰囲気を纏い昨日の朝は執務室の窓から中庭の花壇を見ていてほっと顔をほころばせたのだ。

自分の見間違えだったのかと、凝視したけれどしばらくフレデリックの微笑は消えなかった。

そして今日自分の誕生日にと言って花束と酒をくれたのだ。

酒はわかる。俺は何より酒が好きだから…

だが“この花束はなんだ?あいつどんな顔してこれを買ってきたのか?“とデレクは首をひねった。

何としても突き止めなければならない。

デレクは花束をじっと見てフレデリックの笑顔を思い出すのだった。