ファミレスを出ると、辺りはすっかり暗くなっていた。
「本当に送っていかなくて大丈夫?」
朝比奈君は心配そうにそう言ってくれたけれど、私にとっては、誰かと一緒に歩いているところを見られる方が、何よりも怖い。
それは朝比奈君もわかってくれているようで、「大丈夫」と言うと、すぐに引いてくれた。
「放課後に写真を撮るのは無理だね。必要なら土日でも大丈夫だから、遠慮しないで言って。
じゃあ、また明日」
朝比奈君は、優しい笑顔を向けてくれた。
「また明日……」
当たり前みたいに言われたその言葉は、私にとっては当たり前じゃない。
胸の奥が、じんわりと温かくなる。
その熱を、冷たい風でさえ私から奪うことはできなかった。
翌日の放課後、私はさっそく毛糸を探しに出かけた。
テストが終わってからでいいと朝比奈君は言ってくれたけれど、いったんイメージしてしまったら、作りたい衝動を止められない。
チャコールグレーの太めの毛糸と、ファーの毛糸を買った。
スキップしたいのを我慢しながら、早足で歩く。
前髪とマスクが私の顔を隠してくれていて良かった。きっと私は、ずっとにやけている。
初めて、自分の前髪に感謝した。
パイロット帽の編み図は、昨日ファミレスから帰ってきてすぐに描き始めて、もう出来上がっている。
だから、夕飯もお風呂もダッシュで済ませて、すぐに編み始めた。
編み棒がスイスイと滑る音が、部屋の中で何時間も途切れることはなかった。
ふと時計を見ると、いつの間にか日付は変わっていた。
「えっ? もうこんな時間! 寝なくちゃ」
今から寝たとしても、すぐに起床時間になってしまう。
私は慌ててベッドに潜り込み、ギュッと目をつぶった。
睡眠不足のせいで、目の下にはうっすらと隈ができていた。
(誰にも気づかれないけどね)
と、またまた前髪に感謝する。
それでも、エアコンの効いている教室は暖かくて、何度も睡魔に襲われた。
途中、ほとんど鳴らないスマホが、ブブブ……と震える。
何だろうと思って画面を見ると、朝比奈君からだった。
『なんだか疲れてるみたいだけど、大丈夫?』
(はははっ。バレてる)
『心配してくれてありがとう。ちょっと夜更かししちゃって。大丈夫だよ』
と送った。
前の方に座っている朝比奈君が、ポケットからスマホを取り出すのが見えた。
きっと、私からのメッセージを確認したのだろう。
そして、コクンと小さく縦に首を振った。
私に向けてくれたメッセージ。
それは、この教室に私が「存在している、見えている」と、言ってくれているようだった。
「本当に送っていかなくて大丈夫?」
朝比奈君は心配そうにそう言ってくれたけれど、私にとっては、誰かと一緒に歩いているところを見られる方が、何よりも怖い。
それは朝比奈君もわかってくれているようで、「大丈夫」と言うと、すぐに引いてくれた。
「放課後に写真を撮るのは無理だね。必要なら土日でも大丈夫だから、遠慮しないで言って。
じゃあ、また明日」
朝比奈君は、優しい笑顔を向けてくれた。
「また明日……」
当たり前みたいに言われたその言葉は、私にとっては当たり前じゃない。
胸の奥が、じんわりと温かくなる。
その熱を、冷たい風でさえ私から奪うことはできなかった。
翌日の放課後、私はさっそく毛糸を探しに出かけた。
テストが終わってからでいいと朝比奈君は言ってくれたけれど、いったんイメージしてしまったら、作りたい衝動を止められない。
チャコールグレーの太めの毛糸と、ファーの毛糸を買った。
スキップしたいのを我慢しながら、早足で歩く。
前髪とマスクが私の顔を隠してくれていて良かった。きっと私は、ずっとにやけている。
初めて、自分の前髪に感謝した。
パイロット帽の編み図は、昨日ファミレスから帰ってきてすぐに描き始めて、もう出来上がっている。
だから、夕飯もお風呂もダッシュで済ませて、すぐに編み始めた。
編み棒がスイスイと滑る音が、部屋の中で何時間も途切れることはなかった。
ふと時計を見ると、いつの間にか日付は変わっていた。
「えっ? もうこんな時間! 寝なくちゃ」
今から寝たとしても、すぐに起床時間になってしまう。
私は慌ててベッドに潜り込み、ギュッと目をつぶった。
睡眠不足のせいで、目の下にはうっすらと隈ができていた。
(誰にも気づかれないけどね)
と、またまた前髪に感謝する。
それでも、エアコンの効いている教室は暖かくて、何度も睡魔に襲われた。
途中、ほとんど鳴らないスマホが、ブブブ……と震える。
何だろうと思って画面を見ると、朝比奈君からだった。
『なんだか疲れてるみたいだけど、大丈夫?』
(はははっ。バレてる)
『心配してくれてありがとう。ちょっと夜更かししちゃって。大丈夫だよ』
と送った。
前の方に座っている朝比奈君が、ポケットからスマホを取り出すのが見えた。
きっと、私からのメッセージを確認したのだろう。
そして、コクンと小さく縦に首を振った。
私に向けてくれたメッセージ。
それは、この教室に私が「存在している、見えている」と、言ってくれているようだった。



