伯母さんはきっと悔やんでいる。いっくん
が命懸けでわたしを助けたことを、悔やんで
いる。わたしは血の繋がった姪だけど、実の
娘のように可愛がってくれていたけど、伯母
さんにとってはわたしの命より息子の命の方
がよっぽど重いからだ。
そんな想いを常日頃から抱えているわたし
にとって、このテーマは語らずにはいられな
い人生の教訓のようなもので。生ぬるい世間
一般の常識を口にすることなんか出来なかっ
た。もっともこのことを語ったのが他の生徒
だったら、担任が問題視することはなかった
だろうけど……。わたしに暗い過去があるこ
とを知らない赤垣さんにはそこまで話せず、
口を噤む。
サラサラと花に液肥を与えながら話を聞い
ていた赤垣さんは、ふと手を止めて言った。
「そうやって答えのない問いを繰り返して
いると、迷路から抜け出せなくなるぞ」
膝を抱えていたわたしは、緩やかに声がし
た方を見上げる。赤垣さんは遠くを見やった
まま、言葉を続ける。
「人生は答えのない問題ばかりだからな。
その都度真剣に考えすぎると、迷子になっち
まう。だから答えがわからないことはわから
ないまま、ほっぽっとくんだ。たとえ答えが
白紙のまま生きてたって誰も減点しやしない。
なぜなら、増山さんが悩んでいるその問いの
答えは誰にもわからないからだ」
ゆっくり赤垣さんがわたしを向く。「この
年まで生きても、わからんことだらけだ」と、
目尻のシワを深めている赤垣さんに心が解れ
ていく。ところどころ土で汚れたタオルで汗
を拭っている赤垣さんに、わたしはこくりと
頷いた。
「そっか、わたしが悩んでるのは答えがな
いことなんですね。だから迷子になっちゃっ
てたんだ」
大切な人はたった一人じゃない。だから誰
が一番大事かなんてみんな簡単には決められ
ないし、そんなこと、考えたって答えなんか
見つからない。わからないことは無理に考え
なくていいんだ。
長い間心の奥に転がっていた小さな石ころ
が、ぽろっと取れたような感覚だった。わた
しは膝に顎を乗せると、ふっと笑みを零した。
が命懸けでわたしを助けたことを、悔やんで
いる。わたしは血の繋がった姪だけど、実の
娘のように可愛がってくれていたけど、伯母
さんにとってはわたしの命より息子の命の方
がよっぽど重いからだ。
そんな想いを常日頃から抱えているわたし
にとって、このテーマは語らずにはいられな
い人生の教訓のようなもので。生ぬるい世間
一般の常識を口にすることなんか出来なかっ
た。もっともこのことを語ったのが他の生徒
だったら、担任が問題視することはなかった
だろうけど……。わたしに暗い過去があるこ
とを知らない赤垣さんにはそこまで話せず、
口を噤む。
サラサラと花に液肥を与えながら話を聞い
ていた赤垣さんは、ふと手を止めて言った。
「そうやって答えのない問いを繰り返して
いると、迷路から抜け出せなくなるぞ」
膝を抱えていたわたしは、緩やかに声がし
た方を見上げる。赤垣さんは遠くを見やった
まま、言葉を続ける。
「人生は答えのない問題ばかりだからな。
その都度真剣に考えすぎると、迷子になっち
まう。だから答えがわからないことはわから
ないまま、ほっぽっとくんだ。たとえ答えが
白紙のまま生きてたって誰も減点しやしない。
なぜなら、増山さんが悩んでいるその問いの
答えは誰にもわからないからだ」
ゆっくり赤垣さんがわたしを向く。「この
年まで生きても、わからんことだらけだ」と、
目尻のシワを深めている赤垣さんに心が解れ
ていく。ところどころ土で汚れたタオルで汗
を拭っている赤垣さんに、わたしはこくりと
頷いた。
「そっか、わたしが悩んでるのは答えがな
いことなんですね。だから迷子になっちゃっ
てたんだ」
大切な人はたった一人じゃない。だから誰
が一番大事かなんてみんな簡単には決められ
ないし、そんなこと、考えたって答えなんか
見つからない。わからないことは無理に考え
なくていいんだ。
長い間心の奥に転がっていた小さな石ころ
が、ぽろっと取れたような感覚だった。わた
しは膝に顎を乗せると、ふっと笑みを零した。



