名もなき空に、青い風が吹く

 「よく遊んだな、三人で」

 声にみちびかれて隣を見上げると、待って
いたような大翔の眼差しがあった。

 「遊んだねぇ。ロープにぶら下がって滑り
下りるのが楽しくて、何度も何度も、ロープ
を引っ張って台に戻ってきた」

 「芦香が『二人乗りしよう』って無茶言っ
て、落っこちたこともあったな」

 「あった、あった。あの時は痛かったぁ。
わたしが下敷きなって顎擦り剥いちゃって、
親にさんざん怒られた」

 わたしと大翔が落っこちたのを見て慌てて
走って来たいっくんは、顎から血を流してい
るわたしを見て、ぎょっとしていた。二人を
立たせて服についた砂を一生懸命払ってくれ
たいっくんは、まるで子どもに怪我をさせて
しまった保護者みたいな顔をしていて。わた
しは「すぐ治るから平気だよ」と慰めてしま
ったのを思い出した。

 「懐かしいね。三人でいるのがあたり前だ
ったあの頃が、すごく懐かしい」

 もう二度と取り戻せない時を切なく思いな
がら口にすると、握っている手に力が込めら
れる。

 「俺も、懐かしい。またこの場所に芦香と
来られると思ってなかったから、一緒に思い
出せて、なんかちょっと感動してる」

 とくんと小さく心臓が跳ねる。ふっと大翔
が笑った気配がして、頬が熱くなる。どんな
に時が流れても心は変わらないんだ。ずっと
心の奥に沈めていた気持ちが、確かな温度を
取り戻したのを感じて、わたしは大翔の手を
握り返した。

 手を繋いだまましばらく公園の中を歩いた
けれど、結局未来は視えなかった。大翔の手
を離した瞬間、通り抜けた風がやけに冷たく
感じてわたしは少し肩を震わせた。





 「やっちゃった」

 そう呟くと、わたしは何度目かのため息を
吐く。木製のテーブルに突っ伏してこつんと
額を押し付けると、うわぁ、と心の中で叫び
ながら頭を抱え込んだ。

 久しぶりに『お家帰りたくない病』を発症
してしまったわたしは、中庭のガゼボでひと
り脳内反省会をしていた。事の発端は数日前
に遡る。公民科の授業で「命の重さに違いは
あるか?」というテーマについてディスカッ
ションをしたのだけれど……そこでわたしは
つい、本音をぶちまけてしまったのだ。