「じゃあ、失礼します」
一度深呼吸をして大翔の手を握る。ベンチ
に座ったまま手を握っているわたしたちの姿
は、傍から見れば仲睦まじいカップルに見え
るかもしれない。――でも実際は違う。
これは大翔の運命を変えるための、儀式な
んだ。そんなことを頭の隅で思いながら手を
握っていたけれど、頭はフリーズしなかった。
目の前の光景が変わることもなく、ただ大翔
の温もりがどんどんわたしに染み込んでくる。
まるで互いの体温を交換するようにしばらく
手を握っていたけれど、未来の「み」の字も
視えなかった。
「ダメだ。なんにも視えない」
いいかげん、見つめ合ったまま手を握って
いるのが恥ずかしくなって手を離そうとする
と大翔が立ち上がった。引っ張られるように
してわたしも立ち上がる。
「えっ、なに、どうしたの?」
手を繋いだまま、黙って遊具の方へ歩いて
行く大翔の背中に声をかける。ノアの箱舟を
かたどった大型遊具の横を通り過ぎ、芝生広
場を突っ切ってだだっ広い公園の奥に進んで
行くと、大翔はやっと答えてくれた。
「このまま繋いでれば視えるかもしれない
じゃん。だからちょっと散歩」
「散歩って」
すっかり陽が落ちて暗くなった園内をぐる
っと見回す。遠くに白い犬を散歩させている
お爺さんが見えるだけで、他に人の姿は見当
たらない。子どもの頃はこんな時間まで遊ん
だことがなかったから、しんと静まり返った
公園はなんだか世界から切り離されているよ
うに感じてしまう。この世界にはいま、わた
しと大翔だけ。
そんな不思議な感覚に捉われながら大翔と
手を繋いで歩いて行くと、懐かしい光景が目
の前にあった。
「これ、まだあったんだ」
薄闇の中にターザンロープのシルエットが
浮かび上がっている。木製の古びたそれは子
どもの頃遊んでいた時よりも小さく見えたけ
れど、麻のロープの先に新たに赤い円盤が取
り付けられていて、いまでも人気のある遊具
だということがうかがえた。
一度深呼吸をして大翔の手を握る。ベンチ
に座ったまま手を握っているわたしたちの姿
は、傍から見れば仲睦まじいカップルに見え
るかもしれない。――でも実際は違う。
これは大翔の運命を変えるための、儀式な
んだ。そんなことを頭の隅で思いながら手を
握っていたけれど、頭はフリーズしなかった。
目の前の光景が変わることもなく、ただ大翔
の温もりがどんどんわたしに染み込んでくる。
まるで互いの体温を交換するようにしばらく
手を握っていたけれど、未来の「み」の字も
視えなかった。
「ダメだ。なんにも視えない」
いいかげん、見つめ合ったまま手を握って
いるのが恥ずかしくなって手を離そうとする
と大翔が立ち上がった。引っ張られるように
してわたしも立ち上がる。
「えっ、なに、どうしたの?」
手を繋いだまま、黙って遊具の方へ歩いて
行く大翔の背中に声をかける。ノアの箱舟を
かたどった大型遊具の横を通り過ぎ、芝生広
場を突っ切ってだだっ広い公園の奥に進んで
行くと、大翔はやっと答えてくれた。
「このまま繋いでれば視えるかもしれない
じゃん。だからちょっと散歩」
「散歩って」
すっかり陽が落ちて暗くなった園内をぐる
っと見回す。遠くに白い犬を散歩させている
お爺さんが見えるだけで、他に人の姿は見当
たらない。子どもの頃はこんな時間まで遊ん
だことがなかったから、しんと静まり返った
公園はなんだか世界から切り離されているよ
うに感じてしまう。この世界にはいま、わた
しと大翔だけ。
そんな不思議な感覚に捉われながら大翔と
手を繋いで歩いて行くと、懐かしい光景が目
の前にあった。
「これ、まだあったんだ」
薄闇の中にターザンロープのシルエットが
浮かび上がっている。木製の古びたそれは子
どもの頃遊んでいた時よりも小さく見えたけ
れど、麻のロープの先に新たに赤い円盤が取
り付けられていて、いまでも人気のある遊具
だということがうかがえた。



