「俺、なんか気に障ること言った?」
「言ってないよ。大翔は散歩してきなよ」
「ひとりで歩いても意味ないし。っていう
か、芦香に話したいことあって来たんだけど」
隣を歩きながら、大翔がわたしを覗き込む。
話ってなに、って聞き返しそうになったけれ
ど、きっとあのことが関係しているだろうか
ら喉まで出かかった言葉をごくんと飲み込む。
「ごめん、いまは話せるような気分じゃな
いんだ。また今度にしよう」
前を向いたまま不自然に明るい声で言うと、
大翔がガシッとわたしの手を掴んだ。骨ばっ
た手の力強さを感じた瞬間、わたしは心の中
で“しまった”と呟いた。
「今度っていつ。俺たち五年ぶりに会った
のに、どうして『また今度』なんて言えるの」
怒気を含んだ声にみちびかれて、ゆっくり
振り返る。けれど振り返った先に制服を着た
大翔はいない。ザーッっと頭がフリーズする
感じがして、目の前にありえない光景が映し
出される。重厚感のある建物に囲まれた中庭
の緑が、青い空が、視界から消える。
わたしは息を止め、目を見開いた。
そこはどこかの病室のようだった。
酸素マスクを付け、まっ白なベッドに横たわ
っている大翔の姿が視える。ベッドサイドに
置かれた心電図モニターの波形は規則的な波
を描くことなく、一直線に伸びている。
――それは心臓が止まっているという、証。
白衣を着た医師がなにかを叫んで、周囲に
いる看護師がバタバタと動き始めた。声は聞
こえなくとも、緊迫した空気が伝わってくる。
息をのんで視界に広がる映像を見守ってい
ると、ベッドの上で青白い顔をしている大翔
がシャッとクリーム色のカーテンで覆われた。
ほぼ同時に視えていた映像が幻のように消え
失せ、わたしの目は怪訝な顔をしている大翔
を捉えた。
「どうしたの?」
時間にしてほんの数秒。けれど視えた映像
が衝撃的すぎて、わたしは大翔の問い掛けに
答えることが出来ない。心臓がバクバクして
呼吸が浅くなる。瞬きを忘れていた瞼が現実
に引き戻すように、一度視界を遮ってくれる。
「言ってないよ。大翔は散歩してきなよ」
「ひとりで歩いても意味ないし。っていう
か、芦香に話したいことあって来たんだけど」
隣を歩きながら、大翔がわたしを覗き込む。
話ってなに、って聞き返しそうになったけれ
ど、きっとあのことが関係しているだろうか
ら喉まで出かかった言葉をごくんと飲み込む。
「ごめん、いまは話せるような気分じゃな
いんだ。また今度にしよう」
前を向いたまま不自然に明るい声で言うと、
大翔がガシッとわたしの手を掴んだ。骨ばっ
た手の力強さを感じた瞬間、わたしは心の中
で“しまった”と呟いた。
「今度っていつ。俺たち五年ぶりに会った
のに、どうして『また今度』なんて言えるの」
怒気を含んだ声にみちびかれて、ゆっくり
振り返る。けれど振り返った先に制服を着た
大翔はいない。ザーッっと頭がフリーズする
感じがして、目の前にありえない光景が映し
出される。重厚感のある建物に囲まれた中庭
の緑が、青い空が、視界から消える。
わたしは息を止め、目を見開いた。
そこはどこかの病室のようだった。
酸素マスクを付け、まっ白なベッドに横たわ
っている大翔の姿が視える。ベッドサイドに
置かれた心電図モニターの波形は規則的な波
を描くことなく、一直線に伸びている。
――それは心臓が止まっているという、証。
白衣を着た医師がなにかを叫んで、周囲に
いる看護師がバタバタと動き始めた。声は聞
こえなくとも、緊迫した空気が伝わってくる。
息をのんで視界に広がる映像を見守ってい
ると、ベッドの上で青白い顔をしている大翔
がシャッとクリーム色のカーテンで覆われた。
ほぼ同時に視えていた映像が幻のように消え
失せ、わたしの目は怪訝な顔をしている大翔
を捉えた。
「どうしたの?」
時間にしてほんの数秒。けれど視えた映像
が衝撃的すぎて、わたしは大翔の問い掛けに
答えることが出来ない。心臓がバクバクして
呼吸が浅くなる。瞬きを忘れていた瞼が現実
に引き戻すように、一度視界を遮ってくれる。



