名もなき空に、青い風が吹く

 わたしはいっくんから引き継いだそれらに
水をやると、立ち上がり空を見上げた。誰の
上にも空は平等に広がっている。だけど、い
まは同じ空の下に、そのことを教えてくれた
いっくんはいない。

 もう二度と大切な人を失いたくない。その
ためにわたしが出来ることは、なんだろう?
考え抜いた末、わたしは『救命講習』という
ものに参加することを決めていた。直線にな
っている心電図の波形を思い浮かべたらそれ
しか思いつかなかったのだけれど、なにもし
ないでいるよりよっぽどいいと思ったのだ。

 待ってるだけじゃなにも変わらない。行動
しなきゃ。わたしは夜の空気を吸い込んだ手
すりに肘を乗せると、静かな決意を胸に口を
引き結んだ。