名もなき空に、青い風が吹く

 だけどわたしたちは大の仲良しで、子ども
の頃からそれこそ兄弟のように一緒に過ごし
てきた。同い年の大翔とわたし、そして二つ
年上のいっくん。

 三人でいればそれだけで楽しくて、幸せで、
そんなわたしたちを伯父さんは我が子のよう
に分け隔てなく可愛がってくれたんだ。

 「ついに一人になっちゃったな、叔母さん。
まさかこんな早くダメになると思ってなかっ
たから、連絡来た時はびっくりした」

 空に向かって呟いた大翔に、声もなく頷く。
ひとり息子を亡くし、最愛の夫をも亡くした
伯母さんはいまや独りぼっちだ。

 この斎場が出来て間もない頃、いっくんは
たった十四年の生涯を終えた。ちょうどいま
と同じ季節。終わらない夏に誰もが疲れ始め
る九月半ば。ガラス張りの採光の良い炉前室
に立ち、鈍色の扉の向こうに吸い込まれてい
く棺を見送っていたわたしは、悲しみに耐え
られなかった。いっくんが灰になってしまう
ことに、この世からいなくなってしまうこと
に耐えられず途中で意識を手放してしまった。

 だから、いっくんとちゃんとお別れが出来
なかった。

 「芦香」

 大翔の声で無意識のうちに立ち止まってい
た自分に気付く。太陽に照らされ青々と茂っ
ている芝生から、大翔はいつの間にか幾何学
形状にカットされた飛び石に移っている。

 なんだか足元がおぼつかなかった。

 気を抜くとずぶずぶ芝生に足が沈んでしま
うような、そんな心許ない感覚。大翔と一緒
にいるとどうしたって思い出してしまうのだ。

 二人の真ん中できらきら輝いていた自分を。
 大切な人を死なせてしまったわたしの罪を。

――ダメだ。

 かろうじて形を保っていた心がひび割れて、
壊れそうになる。もっと大翔といたいと思っ
てしまう自分が嫌で、息をしていることさえ
嫌で、消えたくなってしまう。

 「やっぱ暑いから、戻る」

 大翔から目を逸らすようにして、わたしは
突然踵を返した。すると大翔は慌ててあとを
追って来た。