名もなき空に、青い風が吹く

 「ふえっ?」

 その行動の意味がわからず、わたしは目を
見開く。えっ、もしかして手を繋いで歩こう、
ってこと?このシチュエーションからそんな
甘い展開を想像してしまったわたしは、戸惑
って一歩後ずさった。すると大翔がもう片方
の手も差し出す。もしや両手を繋いで、愛を
誓うつもりなのか?と恋の急展開的なシーン
を想像して頬を熱くしていると、はあっ、と
盛大なため息が聞こえた。

 「俺の手、握りに来たんじゃないの?手を
握らないと未来が視えないんだよね」

 「あっ、そうだった!!」

 一番大事なことをうっかり忘れていた自分
に気付き、両手で口をふさぐ。大翔は呆れた
ように肩を竦め、皮肉たっぷりに言った。

 「相変わらず抜けてんな」

 「ぬっ、抜けてないよ。色いろ話している
うちに頭からすっこ抜けちゃっただけ」

 「それを抜けてるって言うんだけどな」

 涼しい顔でもっともなことを言われ、ぐう
の音も出ない。わたしは差し出された大翔の
手を見つめると、ごくりと喉を鳴らした。

 「握ってみて、いいの?」

 「そのために来たんだろ。ここなら人目が
少ないからちょうどいいと思った。両手の方
がいい?片手でもいい?」

 「か、片手でいいです」

 慌ててスカートで手の平の汗を拭う。もし、
この手を握って最悪な未来が視えてしまった
ら、と思うと怖くてなかなか握れない。

 そろり、そろり、と怯えながら大翔の手に
自分の手を近づける。その動きがまどろっこ
しかったのか、大翔はガシッとわたしの手を
掴んだ。瞬間、どきん、と心臓が飛び跳ねた
けれど、頭はフリーズしなかった。目を見開
いて目の前の光景がパッと変わるのを待った
けれど……わたしを見つめる大翔の顔が見え
るばかりで、なにも変わらない。

 「むんっ」

 視えろ、視えろ、視えろ。頭の中で念じな
がら、大翔の大きな手を握りしめる。けれど、
硬く骨ばった手の温もりが伝わってくるだけ
で未来の光景は一ミリも視えなかった。