「怖くないわけじゃないけど、まだ死ぬっ
て決まったわけじゃないじゃん?」
「心電図の線がピーッって直線になってた
んだよ?それって、心臓が止まってますって
ことじゃん」
「まあそうだけど、俺の遺影や墓を視たっ
ていうなら、ああ、そうなんだって思うけど
……なんかピンと来ないんだよな。本当に俺、
死ぬのか?って」
「もう!もし運よく助かったとしても大翔
が瀕死の重傷を負うことに変わりないじゃん。
どうしてそんな呑気なこと言ってられんの?」
他人事のように言って首を傾げている大翔
に、語気を強める。すると、大翔は黒曜石の
ような瞳をまっすぐわたしに向けた。
「最悪、俺がそうなったとしても、芦香が
無事ならそれでいいやって、感じなんだよな。
視えたのが芦香じゃなくて俺の未来で良かっ
たと思うと、ちょっと気持ちが楽っていうか」
そう言って、つい、と視線を逸らしてしま
った大翔に頬が熱くなる。
「馬鹿っ、なに言ってんの」
まさかそんなことを言われるなんて想像も
していなかったわたしは、反応に困ってしま
い下を向いた。プツリと会話が途絶えて沈黙
が流れる。見合いの席で話題を探す二人のよ
うに視線がぶつかっては離れ、辺りを彷徨う。
「そろそろ出よっか」
トレイを持って立ち上がった大翔にわたし
は慌ててついて行った。逃げるように大股で
歩く大翔の背中は照れているようにしか見え
なくて……頬が緩みそうになるのを、必死で
堪えた。
店を出ると商店街は夜の帳に包まれていた。
ガラガラ、とパン屋さんがシャッターを閉め
る音を背中で聞きながら、わたしたちは肩を
並べ歩き始めた。大翔が駅とは逆方向に進ん
でいることに気付いていたけれど、そのこと
には触れず、人通りの疎らな道を歩いて行く。
古い文具店や、看板の字が掠れて読めない
お惣菜屋さん。昭和の面影を残している小さ
な写真屋さん。そんな店を眺めながら、わた
しは何気なく歩幅を合わせてくれている大翔
を向いた。
て決まったわけじゃないじゃん?」
「心電図の線がピーッって直線になってた
んだよ?それって、心臓が止まってますって
ことじゃん」
「まあそうだけど、俺の遺影や墓を視たっ
ていうなら、ああ、そうなんだって思うけど
……なんかピンと来ないんだよな。本当に俺、
死ぬのか?って」
「もう!もし運よく助かったとしても大翔
が瀕死の重傷を負うことに変わりないじゃん。
どうしてそんな呑気なこと言ってられんの?」
他人事のように言って首を傾げている大翔
に、語気を強める。すると、大翔は黒曜石の
ような瞳をまっすぐわたしに向けた。
「最悪、俺がそうなったとしても、芦香が
無事ならそれでいいやって、感じなんだよな。
視えたのが芦香じゃなくて俺の未来で良かっ
たと思うと、ちょっと気持ちが楽っていうか」
そう言って、つい、と視線を逸らしてしま
った大翔に頬が熱くなる。
「馬鹿っ、なに言ってんの」
まさかそんなことを言われるなんて想像も
していなかったわたしは、反応に困ってしま
い下を向いた。プツリと会話が途絶えて沈黙
が流れる。見合いの席で話題を探す二人のよ
うに視線がぶつかっては離れ、辺りを彷徨う。
「そろそろ出よっか」
トレイを持って立ち上がった大翔にわたし
は慌ててついて行った。逃げるように大股で
歩く大翔の背中は照れているようにしか見え
なくて……頬が緩みそうになるのを、必死で
堪えた。
店を出ると商店街は夜の帳に包まれていた。
ガラガラ、とパン屋さんがシャッターを閉め
る音を背中で聞きながら、わたしたちは肩を
並べ歩き始めた。大翔が駅とは逆方向に進ん
でいることに気付いていたけれど、そのこと
には触れず、人通りの疎らな道を歩いて行く。
古い文具店や、看板の字が掠れて読めない
お惣菜屋さん。昭和の面影を残している小さ
な写真屋さん。そんな店を眺めながら、わた
しは何気なく歩幅を合わせてくれている大翔
を向いた。



