名もなき空に、青い風が吹く

 点と点が繋がったような感覚に、しばらく
呆けてしまう。焦点が合わないままぽかんと
口を開けていると、ひらひらと大きな手の平
が目の前を舞った。

 「大丈夫?顔、ヘンだけど」

 はっとして大翔を見る。

 「視えるってどんな風に視えるの?」

 わたしみたいに相手の手を握ると、過去が
視えてしまうのだろうか?未来視と、過去視。
真逆の能力を持っているらしい大翔に、好奇
の眼差しを向けた。

 「カメラのレンズを通すと、その人の過去
が視えることがある」

 「それって、肉眼では視えないってこと?
カメラだったら携帯でもデジカメでも視えち
ゃうってこと?いつそのことに気付いたの?」

 畳みかけるように質問すると、大翔は口角
を上げ得意そうに言った。

 「カメラならなんでも視える。けど肉眼で
視えたことは一度もない。肉眼で視る光景と
カメラのレンズを通して視る光景が違うこと
に気付いたのは、俺もいっくんが亡くなって
しばらくしてから。母さんを携帯のカメラで
撮った時、レンズの向こうに全く別の光景が
広がってたんだ」

 それが過去の光景だとすぐにわかったのは、
子どもの頃の自分が映像の中に視えたからだ
と大翔が付け加える。その話を聞いてまた肌
が粟立ったけれど、わたしはふと、相反する
能力の使い道を考えてしまった。

 「すごい。レンズの向こうに過去の光景が
視えるって、まるでSF映画みたい。でもさ、
でもね、その能力ってどういう使い道がある
のかな?未来を知ってなにか行動することは
出来ても、過去を知ったからといって出来る
ことはなにもないよね?」

 過去視より未来視の能力の方が優れている、
と言っている訳じゃないけれど。漠然とそん
な疑問が浮かんできてしまって、思ったまま
を口にする。すると、大翔は拗ねたように、
ぷくっ、と片方の頬を膨らませた。

 「過去を知って未来が変わることだってあ
るだろ。過去の出来事を知って心が変われば、
人の行動も変わる。行動が変われば未来だっ
て変わる。人は記憶の八割を忘れてしまう生
き物だけど、俺は本人すら忘れている過去を
視ることが出来るんだ。人の力馬鹿にすんな」

 「馬鹿にしてないってば。そっか、過去を
知ると行動が変わる。行動が変われば未来も
変わるんだ。しかも、本人が忘れてることま
で視えちゃうのって、すごいね」