名もなき空に、青い風が吹く

 こんなつまらないわたしを仲間に入れてく
れる二人は天使のようにやさしくて、尊くて、
ありがたい存在だと思っている。それなのに、
友だちだと思っているのに――。

 心から笑えなくて、ごめんね。本当のこと、
なんにも話せなくて、ごめんね。

 二人と笑みを交わしながら心の中で謝ると、
わたしはパズルのピースが揺れるスマホを鞄
にそっと仕舞った。




 帰りのホームルームを終えると二人は仲良
く肩を並べ、颯爽と教室を出て行った。その
背中を笑顔で見送ったわたしはのんびり帰り
支度を整え、ひとり中庭へと向かった。

 「うーん、だいぶ涼しくなったかなぁ」

 六角屋根のガゼボにドサッと鞄を置いて、
思い切り伸びをする。木製の白いガゼボを中
心に四方に花壇が並んでいる中庭は生徒たち
の憩いの場となっていて、ペチュニアやガザ
ニア、マリーゴールドなど夏を代表する花々
が鮮やかに咲き誇っている。

 帰宅部で放課後とくに用がないわたしは、
よくこの中庭で時間を潰して帰るのだ。夏の
暑さや冬の寒さが厳しい時などは図書館で過
ごすこともあるけれど、放課後はほとんど生
徒が来ないこの場所をまるで隠れ家のように
独占していた。

 わたしは木の椅子に腰かけるとぼんやり花
を眺めた。陽射しに照らされていた花の香り
がふわっと漂ってくる。夕暮れに染まり始め
た風がやさしく頬を撫でつける。

 嘘はついてないよね、別に。そんなことを
思って花の香りを細く吐き出す。

 実はこのあと、わたしは大翔と約束がある
のだ。大翔の学校近くのカフェで会う約束を
していて、それまでずいぶん時間があるから
ここで暇を潰している。

 デートじゃないのは本当だし、金欠だとい
うのも本当だ。今月は学食で四回も日替わり
定食を食べてしまったから懐が寂しい。まあ、
ジェラードを食べるくらいのお金はあるのだ
けど……。

 嘘をついていないとは言い切れない事実に、
ちくりと胸が痛みをうったえる。友だち失く
しちゃうかもな、わたし。

 そう思ってため息をひとつついた時だった。

 「なんだ、まーた『お(うち)帰りたくない病』
か」

 聞き慣れた声がして視線をそちらに向ける
と、青い水やりホースを手にした赤垣(あかがき)さんが
立っていた。