名もなき空に、青い風が吹く

 だから時間があるようでない。そんな貴重
な時間を割いてカフェに寄り道するというの
に、仲良しな二人の間にちゃっかり交じって
いるだけのわたしをいつも誘ってくれる。

 充実した高校生活を送りたいという願望が
ないのもあるけれど、二人に申し訳ないとい
う気持ちもあってわたしは三度に一度くらい
しか付き合っていなかった。

 「そうなんだ。でもごめん、今回はパス」

 「えーっ、なんでよぉー。まさかデートの
約束があるとか言わないよねぇ」

 速攻で断ると椅子の上で胡坐を掻いている
和佳が、ばしっ、と自分の膝を叩く。デート
というタイムリーなワードに一瞬、大翔の顔
がちらついてしまったわたしは慌てて顔の前
で手を振った。

 「違うって。金欠なの、いつもの金欠!!」

 「もぉー、またぁ???」

 顔を見合わせた二人の声が絶妙に重なる。
いつもと同じ言い訳を必死な顔で述べたわた
しは、じゃあ仕方ないかと息をついた二人に
ほぅと胸を撫でおろした。

 「いい加減さ、お母さんに髪切ってもらい
なよ。親が美容室経営してるのに他所で髪切
ってカット代払うとか、不毛すぎでしょう?
金欠にもなるって」

 千聖が至極まっとうなことを口にする。
わたしが通っている美容室は地元で一番リー
ズナブルな店だけれど、カット、シャンプー、
ブロー代込みで四千円かかる。それに対して
月のお小遣いは五千円。ショートカットのわ
たしは二か月に一度は切り揃えないと伸びっ
ぱなしみたいになってしまうから正直、お小
遣いに余裕はない。たまの学食代や漫画代に
お金が消えるから、常に金欠だ。

 それでもわたしは美容室である自宅を素通
りし、他の店に通っている。お母さんが他の
お客さんをカットしている姿をガラス越しに
見ながら、駅の反対側に行っているのだ。

 別に反抗期まっ只中というわけじゃないし、
お母さんを嫌っているわけでもない。だけど、
いっくんの四十九日を境にわたしとお母さん
との間に小さな溝が出来てしまったんだ。