狐面の君と、神隠しの夏

―夕方、何とか課題一つを終わらせてまたグダグダしていたら…。


「もう…。

勉強しないならおつかい行ってくれない?気分転換になるでしょう?」


とお母さんに言われてでてきたものの…。


「蚊多すぎじゃない?

っていうかまだ明るの?」


もう…。

初夏特有のじめじめした湿度の高い日は嫌いだ。

蚊も多いし。



買い物メモを見る限り、明日あたりは冷やし中華でも出るんだろうな。

…見飽きた田畑。

見慣れた道。



田舎すぎて逆に人に合わないんだから。


「…あれ。

狐の嫁入り。」


陽が沈みかけのまだ微妙に明るい空から、小雨が降ってきた。


「っ!」


あれ、狐の嫁入り…の、灯り?



―『見てはいけないよ。』

『え?』

『狐の嫁入りはね、見てはいけないんだよ。』

『見ちゃったら、どうするの?』

『そっと、見なかったことにして…お嫁さんの幸せを、祈るんだよ。』



―昔、おばあちゃんに言われたなぁ。

…見なかったことに…。

うん、そうしよう。

…あ、そういえば…。


「って、早くおつかい行かないと!」