「好きだから。」

私はずっとずっと、蓮くんに片思いをしていた。
でも、その思いは伝えられなかった。
伝えたくても、喋ったこともないし、接点がなかった。
学校も違う、学年も違った。
でも、ただひとつだけ一緒だったのがある。それは、習い事。
習い事で、蓮くんに一目惚れしたのがこの恋のはじまりだった。


いつものように、喋らず、見つめているだけの日々。
でも、蓮くんはモテモテで告白ばかりされていると、友人に聞いたことがある。
そんな蓮くんに比べれば、私なんて告白されたことすらない。
こんな私が蓮くんに告白したって断られるだけ、って思っていた。
断られても、諦めれないかもしれないから、思いを伝えられなかった。

そんなある日、突然、蓮くんは姿を消した。
友人に聞いたところ、引っ越すから、習い事をやめたのだと教えてくれた。
でも、ずっと蓮くんに会いたいと思っていた。
想いを伝えておけばよかったと、後悔する日々だった。



それから、九年後。
私は大学生になった。
今でも、蓮くんのことは忘れていない。
だって、ずっと好きだから。
私は今日、大学に行く。昔からの親友・莉愛も同じ大学。だから、心強い。
あぁ、どんな人に会えるかな。私は楽しみで仕方なかった。

大学に着き、莉愛と話していた。
「ねぇ、愛」
「ん? 何?」
「今更なんだけど、私、知っちゃったんだ」
「何を知ったの?」
「ちょっと待って」
莉愛はスマホを触り出した。
知っちゃったって、何を知っちゃったんだろう……。
「これ、見て」
見せられたスマホを見た。そこには、大学のホームページが写しだされていた。
「これが、見てほしいもの?」
「そうだよ。もうちょっと下の方を見て……」
「下の方?」
私はスマホを操作し、スクロールした。
私は一瞬、時が止まったのかと思った。
それくらい、すごい衝撃だった。
そう。そこには私の好きな人。蓮くんが載っていたからだ。
「愛、大丈夫?」
「大丈夫じゃないよ! また、会えるのかな?」
莉愛は私の今までの恋愛を全て、知っている。
これをきっかけに、思いを伝えられるといいな。

その日は、莉愛と一緒に大学を見学した。
「大学って広いね!」
私は莉愛と一緒に階段を下りていた。莉愛が感心したように言った。
「十階もあるよ⁉」
「莉愛、はしゃぎすぎだよ!」
莉愛が先に階段を下り終り、廊下に着いた。
「だってだってだって」
私は早く莉愛のもとに行こうとした。その時だった。
ドン!
私は階段から誰かに押されたのだ。
「危ない!」
すぐ後ろにいた人が私の手を握り、助けてくれた。
た、助かった……。よかった……。
私はお礼を言うために顔をあげた。
お礼を言おうとした時に、助けてくれた人から人が来ているのは(愛には)見えなかった。
「あ、ありが!!!!!」
な、なななんと!! 助けてもらった人とキスをしてしまったのだ。
でも、なぜ、されたのか分からなかった。
助けてくれた人はすぐに離れてくれた。
離れた後に気付いた。人が通って行ったのだと。
きっと、その人が助けてくれた人にぶつかり、キスをしたのだろう。
「ごめん、大丈夫だった?」
助けてくれた人の顔を見た。
私は驚いた。
だって、だって、蓮くんだったから。
え? え?
私は信じられなかった。
ずっとずっと、会いたいと願っていた人に会えたから。
でも、キスをするとは思ってもいなかった。
さっきのキスは嬉しかったが、こんなハプニングでキスをしてしまって、申し訳ないという気持ちだった。
第一、蓮くんは嬉しくもないし、私のことを覚えてなさそうだった。
まぁ、そりゃあ、覚えているわけがないな……。
「あ、大丈夫です。た、助けてくれてありがとうございました。今度、お礼させてください」
「いいよ。お礼なんて」
「愛!」
私を呼んだのは莉愛の声。
あ、莉愛がいること、すっかり忘れてた。
莉愛は私と蓮くんがいるところまで階段を上ってきた。
「愛、大丈夫だった?」
「大丈夫だよ! 莉愛、ありがとう!」
莉愛は助けてくれた人を見て、「愛を助けてくれて有ありが……っ、蓮くん⁉」と、少し大きな声で言った。
「え? そうだけど……」
「愛、もしかして、蓮くんと⁉」
「莉愛、見てた?」
「そりゃあ、見えるでしょう……」
「恥ずかしい……」
私は顔が真っ赤になってると思う。本当に恥ずかしかった。
蓮くんは申し訳なさそうに「あの……」と言った。
「あ、はい」
「何で、俺を知ってるんですか?」
莉愛は「ホームページ!」と元気な声で言った。
「あ……ホームページ……」
蓮くんはひとりで頷いていた。
「あの、蓮くん!」
私は勇気を出して、喋りかけた。
「何?」
「え、えっと……あの……お、お礼がしたいので、連絡先教えてくれませんか?」
「お礼、いいよ。別に」
「え、でも、させてください!」
「そう? じゃあ、連絡先教えるから、後で連絡して」
「あ、ありがとうございます」
「これ、俺の」
蓮くんのスマホのキューアールコードを私はよみ撮った。
ほ、本当に蓮くんと連絡先、交換できた。
「じゃあ、俺、これから授業だから。そろそろいくね。また!」
「あ、本当に助けてくれてありがとうございました」
「うん。じゃあ」
蓮くんは、そのまま階段を下って行った。
蓮くんが見えなくなったあと、私たちも帰り始めた。
そのとき、莉愛が嬉しそうに「愛、よかったね」と笑顔で言った。
「え?」
「『え?』じゃないよ! 蓮くんと再会して、キスして!」
「もう!! やめてよ。莉愛!」
「だって、嬉しかったんでしょ?」
「う、うん。再会できてよかった」
「本当に良かったね」
「莉愛、ありがとう!」

こうして、私は大好きな人と再会したのであった。