アジトを飛び出してから、何時間が経っただろう。
気づけば空からは、あの出会いの日と同じような、激しい大雨が降り注いでいた。
行くあてなんてどこにもない。
実家には真李愛と颯太くんがいるし、私の居場所なんてこの世界のどこにもないんだ。
冷たい雨が体温を奪い、視界が涙でぐしゃぐしゃになって、私は人気のない高架下で膝を抱えて丸まっていた。
「結局、私はいつも雨の中、ひとりぼっち……」
そう呟いて目を閉じた、その時。
バシャバシャと、激しく水溜りを跳ね上げる足音が近づいてきた。
驚いて顔を上げた瞬間、私の前に、全身びしょ濡れで息を荒くした流星くんが立っていた。
「……はぁ、はぁ、……見つけた……っ!」
「流星、くん……? なんで……っ」
驚きで声が震える。流星くんのいつも完璧に整えられている黒髪は雨で額に張り付き、肩は激しく上下していた。
車も使わず、私を必死に探して走ってきてくれたんだと、ひと目で分かった。
「なんで逃げんだよ……! 勝手にいなくなってんじゃねぇよ!」
流星くんは私に駆け寄ると、痛いくらいに強く、私の肩を掴んだ。
その瞳は、怒りと、それ以上の激しい不安で不器用に揺れている。
「だって……私、流星くんの足手まといになりたくない……っ! 凜々花さんから聞いたの。二人は婚約者だって……私なんかじゃ、流星くんの隣にいる資格なんてない……!」
溢れ出した涙が、雨と一緒に頬を伝う。
また昔の地味な自分に逆戻りしたみたいに俯く私に、流星くんは叫ぶように言った。
「あんな女、関係ねぇ!! 親同士が勝手に決めただけの話だ! お前がいなくなった後、速攻で実家ごとぶち壊して、婚約なんて完全に白紙に戻してきたわ!」
「え……っ?」
驚いて顔を上げると、流星くんは優しく、だけど拒絶を許さない強さで、私をその逞しい胸の中に抱きすくめた。
「俺の婚約者は、後にも先にも美李愛、お前だけだ。……お前が地味だろうが、世界一の美少女だろうが、そんなの関係ねぇ。俺はお前の、その優しくて綺麗な心に惚れたんだよ」
耳元で響く、流星くんの必死な声。雨の冷たさをかき消すような、熱いぬくもり。
「頼むから、俺の側から離れないでくれ。お前がいない世界なんて、俺には何の意味もない。……命がけでお前を守る。だから、俺だけのものになってくれ」
誰もが恐れる「最強の鬼」が、私の胸に顔を埋めて、子供のように必死に私を求めている。
真李愛の影でもなく、誰の身代わりでもない。流星くんは、ただ「私」を、命をかけるほど愛してくれているんだ。
「流星くん……っ、私も……流星くんの側に行きたい……っ!」
私が彼の背中に手を回して強く抱きしめ返すと、流星くんは愛おしそうに私の顔を包み込み、雨の中で優しく、だけど深く、誓いのようなキスを交わした。
高架下の暗闇の向こうから、「あーあ、やっぱり流星には敵わないね」と苦笑いする蓮くんの声や、「戻りましょう。風邪をひきます」と呆れつつも安心したような律くんの声、そして「二度と泣かせるなよ」と呟く碧くんの気配がした。
四人の最強の騎士たちに見守られながら、私の心にかかっていた雨雲は、今度こそ完全に晴れ渡ったのだった――。
気づけば空からは、あの出会いの日と同じような、激しい大雨が降り注いでいた。
行くあてなんてどこにもない。
実家には真李愛と颯太くんがいるし、私の居場所なんてこの世界のどこにもないんだ。
冷たい雨が体温を奪い、視界が涙でぐしゃぐしゃになって、私は人気のない高架下で膝を抱えて丸まっていた。
「結局、私はいつも雨の中、ひとりぼっち……」
そう呟いて目を閉じた、その時。
バシャバシャと、激しく水溜りを跳ね上げる足音が近づいてきた。
驚いて顔を上げた瞬間、私の前に、全身びしょ濡れで息を荒くした流星くんが立っていた。
「……はぁ、はぁ、……見つけた……っ!」
「流星、くん……? なんで……っ」
驚きで声が震える。流星くんのいつも完璧に整えられている黒髪は雨で額に張り付き、肩は激しく上下していた。
車も使わず、私を必死に探して走ってきてくれたんだと、ひと目で分かった。
「なんで逃げんだよ……! 勝手にいなくなってんじゃねぇよ!」
流星くんは私に駆け寄ると、痛いくらいに強く、私の肩を掴んだ。
その瞳は、怒りと、それ以上の激しい不安で不器用に揺れている。
「だって……私、流星くんの足手まといになりたくない……っ! 凜々花さんから聞いたの。二人は婚約者だって……私なんかじゃ、流星くんの隣にいる資格なんてない……!」
溢れ出した涙が、雨と一緒に頬を伝う。
また昔の地味な自分に逆戻りしたみたいに俯く私に、流星くんは叫ぶように言った。
「あんな女、関係ねぇ!! 親同士が勝手に決めただけの話だ! お前がいなくなった後、速攻で実家ごとぶち壊して、婚約なんて完全に白紙に戻してきたわ!」
「え……っ?」
驚いて顔を上げると、流星くんは優しく、だけど拒絶を許さない強さで、私をその逞しい胸の中に抱きすくめた。
「俺の婚約者は、後にも先にも美李愛、お前だけだ。……お前が地味だろうが、世界一の美少女だろうが、そんなの関係ねぇ。俺はお前の、その優しくて綺麗な心に惚れたんだよ」
耳元で響く、流星くんの必死な声。雨の冷たさをかき消すような、熱いぬくもり。
「頼むから、俺の側から離れないでくれ。お前がいない世界なんて、俺には何の意味もない。……命がけでお前を守る。だから、俺だけのものになってくれ」
誰もが恐れる「最強の鬼」が、私の胸に顔を埋めて、子供のように必死に私を求めている。
真李愛の影でもなく、誰の身代わりでもない。流星くんは、ただ「私」を、命をかけるほど愛してくれているんだ。
「流星くん……っ、私も……流星くんの側に行きたい……っ!」
私が彼の背中に手を回して強く抱きしめ返すと、流星くんは愛おしそうに私の顔を包み込み、雨の中で優しく、だけど深く、誓いのようなキスを交わした。
高架下の暗闇の向こうから、「あーあ、やっぱり流星には敵わないね」と苦笑いする蓮くんの声や、「戻りましょう。風邪をひきます」と呆れつつも安心したような律くんの声、そして「二度と泣かせるなよ」と呟く碧くんの気配がした。
四人の最強の騎士たちに見守られながら、私の心にかかっていた雨雲は、今度こそ完全に晴れ渡ったのだった――。



