雨の日に傘をくれたのは、誰もが恐れる最強の鬼でした。

夏の夕暮れ。
律先輩が手配してくれた最高級の京の離れで、私は流星くんの手によって、ほんのり大人のメイクを施され、白地に鮮やかな桜が舞う上質な浴衣に身を包んでいた。
長い前髪を綺麗にアップにまとめ、白磁のようなうなじが露出した私の姿を見た瞬間、部屋に入ってきた流星くんの動きがピタッと凍りついた。
「……流星くん? 変かな……?」
不安になって上目遣いで見上げると、黒い小紋の浴衣を粋に着こなした流星くんは、顔を真っ赤にして私の肩をガシッと抱きすくめた。
「変なわけねぇだろ……ッ! 可愛すぎて、綺麗すぎて、今すぐこの浴衣を全部引きちぎって、旅行なんか中止にしてこのままベッドに押し倒したいくらいだ……!」
「あはは! パパ、またママにエッチな目つきしてるじょ!」
3歳になった長男の楓くんと次男の椿くんが、パパ譲りの超絶イケメンな顔にニヤニヤ笑いを浮かべる。
「ママ、宇宙でいちばんちゅてき(素敵)! パパ、ママをいじめちゃめっ(めっ)だじょ!」
浴衣を着てお人形さんみたいに可愛い長女の桜ちゃんが流星くんの脚をポカポカ叩き、私の腕の中では、1歳の柚ちゃんが「キャッキャ」と嬉しそうに声を上げていた。
私たちは夜の帳が下りる頃、きらめく灯籠の光に照らされた伏見稲荷大社へと向かった。
幻想的に続く千本鳥居の真っ赤な光の中、流星くんは他人の視線から私を隠すように、私の腰をグイッと引き寄せ、恋人繋ぎで強く強く手を握りしめてくれたの。
「美李愛……一生、お前を誰にも渡さねぇ。この神聖な鳥居の真ん中で、もう一度誓ってやる」
耳元で囁かれる絶対王の低くて甘い声に、私の心臓はまた、付き合いたてみたいにドクドクと暴れてしまうのだった。