外に出ると、まるで私の心を映したかのような激しい大雨が降っていた。
傘なんて持っていない。でも、どうでもよかった。
冷たい雨が容赦なく体温を奪っていくけれど、真李愛と颯太くんに惨めな形で裏切られた心の痛みに比べたら、一ミリも寒くなんてなかった。
「私には、もう何もない……」
誰も私を見てくれない。私の心なんて、誰も求めていない。
生きる意味を失くした私は、ただ泥をすするような絶望の中で、孤独に夜の街を彷徨っていた。
視界が雨と涙で歪む。足に力が入らなくなり、冷たいアスファルトに膝をつきそうになった、その時。
ぴたり、と体に打ち付けられていた激しい雨が止んだ。
「……え?」
見上げると、私の頭上には大きな黒い傘。
そして、その傘の柄を握っているのは、息をのむほど整った容姿をした、一人の美青年だった。
夜の闇に溶けそうな漆黒の髪に、すべてを見透かすような鋭い瞳。彼から放たれる圧倒的なオーラに、息が止まる。
彼こそが、この街の裏社会や不良たちから「最強の鬼」と恐れられている絶対的な存在――流星くんだった。
「おい。何してんだよ、お前。死にそうな顔して」
低くて、だけどどこか心地のいい声が降ってくる。
誰もが近づくことすら怯える「鬼」のはずなのに、彼は自分が濡れるのも構わず、傘をまっすぐ私に差し向けていた。
「私、は……っ」
うまく声が出ない。こんなボロボロで醜い私なんかに関わらないでほしい。
そう思って俯こうとした私を、流星くんの大きな手が優しく遮った。
「……待て」
流星くんの指先が、雨で顔に張り付いていた私の長い前髪を、そっとかき上げる。
その瞬間、彼の動きが凍りついた。
誰も見たことがなかった、私の本当の素顔。
長い前髪の奥に隠されていたのは、自分を美少女だと疑わない妹・真李愛を遥かに超越する、世界一の美少女と言っても過言ではないほどの、息をのむほどに美しい顔だった。
雨に濡れた長い睫毛、白磁のような肌、そして涙に濡れてきらめく大きな瞳。
流星くんは言葉を失ったように、じっと私を見つめている。その瞳には、恐怖ではなく、狂おしいほどの熱が宿っていた。
「……お前、なんだその顔。……なんでそんな綺麗な顔して、そんなに傷ついてんだよ」
流星くんの手が、私の頬に伝う雨水をそっと拭う。その手のぬくもりがあまりにも優しくて、張り詰めていた糸が切れた私は、そのまま彼の胸へと倒れ込んでしまった。
「っ、おい……!」
意識が遠ざかる中、流星くんが私を強く、壊れ物を扱うように抱きしめる感覚だけが残っていた。
誰も気づかなかった私の素顔と、本当の心。それを、世界で一番恐ろしいはずの「鬼」が、いま見つけてくれたんだ――。
傘なんて持っていない。でも、どうでもよかった。
冷たい雨が容赦なく体温を奪っていくけれど、真李愛と颯太くんに惨めな形で裏切られた心の痛みに比べたら、一ミリも寒くなんてなかった。
「私には、もう何もない……」
誰も私を見てくれない。私の心なんて、誰も求めていない。
生きる意味を失くした私は、ただ泥をすするような絶望の中で、孤独に夜の街を彷徨っていた。
視界が雨と涙で歪む。足に力が入らなくなり、冷たいアスファルトに膝をつきそうになった、その時。
ぴたり、と体に打ち付けられていた激しい雨が止んだ。
「……え?」
見上げると、私の頭上には大きな黒い傘。
そして、その傘の柄を握っているのは、息をのむほど整った容姿をした、一人の美青年だった。
夜の闇に溶けそうな漆黒の髪に、すべてを見透かすような鋭い瞳。彼から放たれる圧倒的なオーラに、息が止まる。
彼こそが、この街の裏社会や不良たちから「最強の鬼」と恐れられている絶対的な存在――流星くんだった。
「おい。何してんだよ、お前。死にそうな顔して」
低くて、だけどどこか心地のいい声が降ってくる。
誰もが近づくことすら怯える「鬼」のはずなのに、彼は自分が濡れるのも構わず、傘をまっすぐ私に差し向けていた。
「私、は……っ」
うまく声が出ない。こんなボロボロで醜い私なんかに関わらないでほしい。
そう思って俯こうとした私を、流星くんの大きな手が優しく遮った。
「……待て」
流星くんの指先が、雨で顔に張り付いていた私の長い前髪を、そっとかき上げる。
その瞬間、彼の動きが凍りついた。
誰も見たことがなかった、私の本当の素顔。
長い前髪の奥に隠されていたのは、自分を美少女だと疑わない妹・真李愛を遥かに超越する、世界一の美少女と言っても過言ではないほどの、息をのむほどに美しい顔だった。
雨に濡れた長い睫毛、白磁のような肌、そして涙に濡れてきらめく大きな瞳。
流星くんは言葉を失ったように、じっと私を見つめている。その瞳には、恐怖ではなく、狂おしいほどの熱が宿っていた。
「……お前、なんだその顔。……なんでそんな綺麗な顔して、そんなに傷ついてんだよ」
流星くんの手が、私の頬に伝う雨水をそっと拭う。その手のぬくもりがあまりにも優しくて、張り詰めていた糸が切れた私は、そのまま彼の胸へと倒れ込んでしまった。
「っ、おい……!」
意識が遠ざかる中、流星くんが私を強く、壊れ物を扱うように抱きしめる感覚だけが残っていた。
誰も気づかなかった私の素顔と、本当の心。それを、世界で一番恐ろしいはずの「鬼」が、いま見つけてくれたんだ――。



