颯太くんと付き合って三ヶ月。私の世界は、彼というひだまりのおかげで、確かに輝いていた。
あの日までは。
「……あれ? 颯太くん、まだ部屋にいるのかな」
その日は、颯太くんの家で映画を観る約束をしていた。先に部屋で待っていてと言われていたけれど、少し早く着きすぎてしまった。
インターホンを押しても反応がない。鍵が開いていたので、私は「お邪魔します」と小さく呟いて、静かに一歩を踏み入れた。
リビングに向かおうとした時、奥の寝室から、かすかな声が聞こえてきた。
「ねえ、颯太さん……本当に私じゃダメなの?」
「っ……真李愛、だめだ、俺には美李愛が……」
「お姉ちゃんには内緒にすればいいよ? 私の方が、ずっと可愛いでしょ……?」
頭が真っ白になった。
聞き間違えるはずのない、甘ったるい妹の声。そして、困惑しながらも抗いきれていない、大好きな彼氏の声。
心臓の音がうるさくて、息ができない。
嫌だ、見たくない。そう思うのに、足は吸い寄せられるように、少しだけ開いた寝室のドアへと向かっていた。
隙間から覗いた視界の先。
薄暗いベッドの上で、肌を重ね合わせ、激しく乱れた呼吸を紡ぐ二人の姿があった。
「あ、は……っ、颯太さん、すごい……」
「真李愛……っ、お前、なんでそんなに……」
シーツの擦れる音。真李愛の満足げな、勝ち誇ったような声。
そして、私を「優しい」と言って抱きしめてくれた颯太くんの腕が、今は激しく妹を抱きすくめている。
身体の関係を持っている二人の姿は、あまりにも生々しく、決定的だった。
パリン、と。私の中で、何かが完全に砕け散った。
「……ぁ」
声にならない悲鳴が漏れた瞬間、二人の動きが止まる。
「美李愛……!?」
青ざめた顔で跳ね起きる颯太くん。その隣で、真李愛はわざとらしくシーツで胸元を隠しながら、ふっと意地の悪い笑みを浮かべた。
「ごめんねお姉ちゃん。でも、颯太さん、私に夢中になっちゃったみたい」
私は言葉が出なかった。涙すら流れない。
服を慌てて着直した颯太くんが、私に近づいてくる。謝ってくれる、言い訳をしてくれる。
そう思った。だけど、彼の口から出たのは、あまりにも冷酷な現実だった。
「……ごめん、美李愛。俺、やっぱり真李愛ちゃんみたいな可愛い子に迫られて、理性が保てなかった。美李愛のことは好きだった。でも……もう、お前を見て男として興奮できないんだ。……別れてくれ」
「優しい心が好き」と言った男の口から出た、残酷な本音。
結局、彼も私の「外見」ではなく、妹の「美しさ」を選んだのだ。
「……っ」
私は一言も発せられないまま、その場から逃げ出した。背後で真李愛のクスクス笑う声が、いつまでも耳にへばりついて離れなかった。
あの日までは。
「……あれ? 颯太くん、まだ部屋にいるのかな」
その日は、颯太くんの家で映画を観る約束をしていた。先に部屋で待っていてと言われていたけれど、少し早く着きすぎてしまった。
インターホンを押しても反応がない。鍵が開いていたので、私は「お邪魔します」と小さく呟いて、静かに一歩を踏み入れた。
リビングに向かおうとした時、奥の寝室から、かすかな声が聞こえてきた。
「ねえ、颯太さん……本当に私じゃダメなの?」
「っ……真李愛、だめだ、俺には美李愛が……」
「お姉ちゃんには内緒にすればいいよ? 私の方が、ずっと可愛いでしょ……?」
頭が真っ白になった。
聞き間違えるはずのない、甘ったるい妹の声。そして、困惑しながらも抗いきれていない、大好きな彼氏の声。
心臓の音がうるさくて、息ができない。
嫌だ、見たくない。そう思うのに、足は吸い寄せられるように、少しだけ開いた寝室のドアへと向かっていた。
隙間から覗いた視界の先。
薄暗いベッドの上で、肌を重ね合わせ、激しく乱れた呼吸を紡ぐ二人の姿があった。
「あ、は……っ、颯太さん、すごい……」
「真李愛……っ、お前、なんでそんなに……」
シーツの擦れる音。真李愛の満足げな、勝ち誇ったような声。
そして、私を「優しい」と言って抱きしめてくれた颯太くんの腕が、今は激しく妹を抱きすくめている。
身体の関係を持っている二人の姿は、あまりにも生々しく、決定的だった。
パリン、と。私の中で、何かが完全に砕け散った。
「……ぁ」
声にならない悲鳴が漏れた瞬間、二人の動きが止まる。
「美李愛……!?」
青ざめた顔で跳ね起きる颯太くん。その隣で、真李愛はわざとらしくシーツで胸元を隠しながら、ふっと意地の悪い笑みを浮かべた。
「ごめんねお姉ちゃん。でも、颯太さん、私に夢中になっちゃったみたい」
私は言葉が出なかった。涙すら流れない。
服を慌てて着直した颯太くんが、私に近づいてくる。謝ってくれる、言い訳をしてくれる。
そう思った。だけど、彼の口から出たのは、あまりにも冷酷な現実だった。
「……ごめん、美李愛。俺、やっぱり真李愛ちゃんみたいな可愛い子に迫られて、理性が保てなかった。美李愛のことは好きだった。でも……もう、お前を見て男として興奮できないんだ。……別れてくれ」
「優しい心が好き」と言った男の口から出た、残酷な本音。
結局、彼も私の「外見」ではなく、妹の「美しさ」を選んだのだ。
「……っ」
私は一言も発せられないまま、その場から逃げ出した。背後で真李愛のクスクス笑う声が、いつまでも耳にへばりついて離れなかった。



