ねえ、はやく降参してよ。 ――同じ苗字になっても、まだ足りない。甘くて焦れったい心理戦を続ける夫婦。【連載中】


「残念なのは、マナなんじゃないの?」

 動じることなく、さらりと言い放った。

「いやいや。絶対、ハル!」

 負けじと張り合ってくるが、その目尻は楽しげに下がっていた。

 俺の視線は、彼女の熱を帯びた首筋や、カップにかけられた細い指先に向けられている。
 こういうとき、どうやってこの強がりを降参させようか、静かに算段を巡らせてばかりいる。

「まあ、そうかもな。だから、治ったらよろしくな?」

 ジャスミンの香りを味わいながら、わざと低い声で囁いた。

「……っ」

 さっきまでの悪戯顔はどこへやら、分かりやすく言葉を詰まらせ、恥ずかしそうに視線を逸らすマナ。
 自分から仕掛けておきながら、いつも最後はこんなふうに黙り込んでしまうところまで含めて、たまらなく夢中にさせられている。

 結局のところ、負けているのはいつも俺の方なのかもしれない。

 ちなみに――次の火曜まで待つ余裕などあるはずもなく、彼女の体調が回復したことを確認できた晩に、たっぷりとリベンジさせてもらったのだった。