ねえ、はやく降参してよ。 ――同じ苗字になっても、まだ足りない。甘くて焦れったい心理戦を続ける夫婦。


 こんな狂おしいほどの感情を抱えているのは、きっと自分だけ。
 そう感じては勝手に苛立ち、あからさまに態度に出した。
 マナはいつも困ったように眉を下げながら、そんな俺をあやした。

 でも、苦い別れを経験して、再び会えて、一緒になれて。
 渇望はいまだになくならないものの、彼女にとって心地のよい愛情表現の仕方を、幾分かは身につけることができたはずだった。

 しかし、結局――。
 根本的には、何も変われていなかった。

 いとも簡単に「離れること」を受け入れようとした顔を見て、衝動的に浴びせてしまった不用意な言葉。
 それが今になって、この胸を鋭く抉る。

 仮に、マナが日本に残り、別々の場所で暮らすことになったとしても。
 あのときとは違う。別れるわけじゃない。
 一時帰国したら、あるいは彼女が訪ねてきてくれたら、また抱き合える。
 一生を誓い合った、二人なのだから。

 それなのに、一体何が足りないというのだろう。

 いくら自問を繰り返しても、答えは何ひとつ出なかった。