ねえ、はやく降参してよ。 ――同じ苗字になっても、まだ足りない。甘くて焦れったい心理戦を続ける夫婦。


 それから、どれくらい時間が過ぎたのだろう。
 二十分、あるいはもっと長く感じたかもしれない。

 鍵穴でキーが回され、扉が開く音がした。

 やがて、汗と夜の匂いを薄っすらと纏った影が、寝室へと入ってくる。

 たまらず駆け寄って、その腰に腕を回した。

 何も、喋らなかった。
 さっきの口論の続きも、今後についての話し合いも。

 そのまま、マットレスに沈み込まされた。

 力強い手のひらから伝わってくるのは、不安を塗りつぶすような、息が詰まるほど必死な熱だった。