ねえ、はやく降参してよ。 ――同じ苗字になっても、まだ足りない。甘くて焦れったい心理戦を続ける夫婦。


 当然、別れたくなんてなかった。
 けれど、そのときのハルが出会った頃のように笑わなくなっていたことも、心に引っかかっていて。

 ハルは、私をたくさん笑顔にしてくれた。
 それなのに、私は彼からそれを奪ってしまっているのかもしれない。

 ハルの望む通りにしよう――。
 そう自分に言い聞かせ、受け入れてしまった。

 それでもやっぱり、会いたくて。

『ごめんね』って連絡すれば、なかったことにできるのだろうかと、ずっと悩んでいたけれど。
 最後に見た表情を思い出すたび、あれで終わりなのだと痛感させられた。

 その答え合わせをするかのように、ハルからの連絡もなかった。
 鳴らないスマートフォンを見つめながら、ただ絶望するしかなかった。

 だから――数年越しに再会できたとき。
 恋人という形じゃなくても顔を見られたことが、どうしようもなく嬉しかった。
 抱きしめたくなる気持ちも、あの体温を恋しく思う気持ちも、彼の迷惑にならないように、なんとか押さえつけようとした。

 それでもハルは、自分の感情に行動が追いつかない私を、いつだって力強く引っ張ってくれた。
 私の望む道へと、導いてくれた。

 離れても平気なわけ、ない――。