ねえ、はやく降参してよ。 ――同じ苗字になっても、まだ足りない。甘くて焦れったい心理戦を続ける夫婦。


 見つめ合ったまま、沈黙が流れる。

「……ロンドン……」

「…………」

「……赴任……」

「…………」

 自分の膝の上に置いた指先へと視線を移し、俺が伝えたことを独り言のように繰り返す。

「二年か……結構、長いね」

 そう呟いたあと、マナは再び、俺を見上げる。

 そして――。

 ひどく力のない、諦めたような微笑みを浮かべ、言った。


「毎日電話とかすれば……乗り越えられるかな?」


 嫌な動悸が鳴る。

 それは、俺が切り出した別れを受け入れた日の表情と、残酷なほど重なっていた。