ねえ、はやく降参してよ。 ――同じ苗字になっても、まだ足りない。甘くて焦れったい心理戦を続ける夫婦。


『お見通し』なんて、得意げに言うけれど。
 この生意気な年下夫は、実は私のことをまだまだ分かっていない。

 きっと、自分ばかりが熱を上げていて、私はただそれを受け止めているだけだと思っているけれど。
 本当は、私だって――どうしようもないくらい好きなんだよ。

 さっきまでの余韻を確かめるように、広い胸元へ顔を擦り寄せた。
 石鹸の清潔な香りに、微かに甘さが混ざった匂いがする。

「……なに。もう一回?」

 ハルは面白がるように囁きながら、腰のラインをなぞってきた。

「ばか。違うよ」

 素肌から伝わる、小さく笑う身体の振動と、規則正しい心音を感じながら、静かに目を閉じた。

 ひどく穏やかな、満たされた夜だった。