◇
ダイニングテーブルに、遠慮がちにコトッと小さな音を立てる。
置いたのは、まだ薄いセロファンすら剥がしていない小ぶりな香水の箱。
昨日、サロンに来た同年代の男性客から『差し入れ』として渡されたものだった。
美容師という職業柄、お菓子などを頂くことはあるが、香水はさすがに初めてだ。
サロンのSNSを担当している一番若手のスタッフが、私のお客様だとわかるように『素敵な差し入れ、ありがとうございます!』と写真をアップしていた。
ハルがそのアカウントを定期的にチェックしていることは知っていたから、そのうちバレるだろうとは思っていたけれど。
「人妻に香水を差し入れるって、どういう神経?」
ハルは息を吐いて、鞄を椅子の上へ無造作に置いた。
ネクタイを緩めながら、感情を抑えるように低い声で問い詰めてくる。
「さ、さあ……? でもわざわざ買ったわけじゃなくて、お仕事の関係で手に入ったみたいで」
「なんで、マナに?」
「女性ものだし……その人、独身で彼女もいないらしいから、あげる人がいなかったのかも」
焦るあまり、つい余計な情報まで口走ってしまった。
「あ……ええっと……」
目を泳がせながら弁明を考えるけれど、何も浮かばない。
室内の温度が、もう一段階スッと下がった気がした。
ハルは有無を言わさぬ動作で箱を取り上げると、私の手の届かない場所へとそれを隠してしまった。
ダイニングテーブルに、遠慮がちにコトッと小さな音を立てる。
置いたのは、まだ薄いセロファンすら剥がしていない小ぶりな香水の箱。
昨日、サロンに来た同年代の男性客から『差し入れ』として渡されたものだった。
美容師という職業柄、お菓子などを頂くことはあるが、香水はさすがに初めてだ。
サロンのSNSを担当している一番若手のスタッフが、私のお客様だとわかるように『素敵な差し入れ、ありがとうございます!』と写真をアップしていた。
ハルがそのアカウントを定期的にチェックしていることは知っていたから、そのうちバレるだろうとは思っていたけれど。
「人妻に香水を差し入れるって、どういう神経?」
ハルは息を吐いて、鞄を椅子の上へ無造作に置いた。
ネクタイを緩めながら、感情を抑えるように低い声で問い詰めてくる。
「さ、さあ……? でもわざわざ買ったわけじゃなくて、お仕事の関係で手に入ったみたいで」
「なんで、マナに?」
「女性ものだし……その人、独身で彼女もいないらしいから、あげる人がいなかったのかも」
焦るあまり、つい余計な情報まで口走ってしまった。
「あ……ええっと……」
目を泳がせながら弁明を考えるけれど、何も浮かばない。
室内の温度が、もう一段階スッと下がった気がした。
ハルは有無を言わさぬ動作で箱を取り上げると、私の手の届かない場所へとそれを隠してしまった。



