ねえ、はやく降参してよ。 ――同じ苗字になっても、まだ足りない。甘くて焦れったい心理戦を続ける夫婦。


「…………」

「マナ」

「…………」

「妬いたって、言えよ」

「…………」

 私の身体を這うように伸びてくる手のひら。
 このままでは終わらないと、観念した。


「……妬いたけど、なに?」


 そう口にするや否や。
 苦しくなるくらい、強く抱きしめられた。


 肩を掴まれ、強引に身体の向きを変えられる。

 視界に映ったハルは――こちらをモヤモヤさせていたことなど気にも留めないほど、思いきり嬉しそうに目を細めていた。


「……可愛い」


 甘い声とともに、深い口づけが落ちてくる。

 まだ薄っすらと残る、シャンプーの香りに包まれた。

 諦めて身を委ねたその夜、ハルはいつも以上に暴走していた。
 やっぱり少し酔っていたんじゃないかなと、思うくらいに。