ねえ、はやく降参してよ。 ――同じ苗字になっても、まだ足りない。甘くて焦れったい心理戦を続ける夫婦。


「ハルくんは、どうしてたの?」

「え?」

「この三年間」

 テーブルに残った、ジョッキの丸い染み。
 それを、なんとなく目で辿る。

「……特に、聞いてない」

「ええっ! そういうのって、すり合わせてから結婚するもんじゃないの!?」

 驚いた拍子に、ミズキの手元が大きく揺れた。

「私が話したら、ハルは絶対に怒るだろうし……」

「ああ。嫉妬深さは、相変わらずなんだ」

 ミズキは、文化祭でハルに声をかけられた日から、付き合っていたとき、別れたときまで、すべて知っているのだ。

「でも、マナは? 気になるでしょ?」

「気になるけど……」

 たとえば。
 ハルが、私じゃない誰かと部屋のソファに座っている。

 その光景を思い浮かべそうになって、慌てて頭を振った。

「やっぱり……あんまり知りたくない、かも」

 喉の奥が、キュッと締まった。

 ミズキは「え? 可愛いんだけどっ!」と吹き出した。

 そして、背中をポンッ、と叩かれる。

「まあ、飲め飲め! 今日はお祝いってことで奢るから!」