ねえ、はやく降参してよ。 ――同じ苗字になっても、まだ足りない。甘くて焦れったい心理戦を続ける夫婦。【連載中】

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 サロンではまだ若手の方である私は、いつもなら閉店後の片付けを担うところだが、特別に早上がりをもらっていた。

 週末で休みこそ取れなかったものの、今日は――二回目の結婚記念日なのだ。


 湿気が肌にまとわりつく、夜八時の都心。
 先に店を出て待つ、ハルの元へ急ぐ。

 早歩きで大通りに出て、事前に聞いていた色の車が路肩に停まっているのを見つけ、駆け寄った。

 スモークガラス越しに、眼鏡をかけた夫の横顔を確認し、助手席のドアを開ける。


 そして、パタン、と重いドアを閉め、外の喧騒を遮断した直後――。

 シートベルトを引き出そうとした腕が掴まれ、有無を言わせず唇を塞がれた。