◇
そんな懐かしい記憶に浸りながら、本日最後のお客さんであるハルの会計をする。
短くなった襟足を眺めていると、思わず本音が口からこぼれた。
「うん。可愛いっ」
ハルは、クレジットカードの暗証番号を入力していた指をピタリと止めて、「あ?」と軽く睨んできた。
「褒めてるんだってば」
「……あとで覚えとけよ」
「きゃー。こわーい」
いつものように軽口を叩き合っていると、同僚の男性スタイリストがバックヤードからカウンターへやってきた。
「あっ、マナちゃんの弟さん?」
ハルの眉がピクリと動く。
周囲の温度が、数度下がったような錯覚に陥る。
「……違いますよ! 夫です」
同僚はなぜか「え、マジか!」と少し驚き、私たちの顔を見比べた。
「笑い方が一緒だから、姉弟かと思った!」
そして、ちょっと嬉しいことを言ってくれる。
「てか、こんなイケメンが旦那さん!?」
無邪気に感心する同僚に対し、ハルは静かに微笑み返している。
けれど、長年一緒にいる私には分かった。
その瞳の奥が、一切笑っていないことが。
そんな懐かしい記憶に浸りながら、本日最後のお客さんであるハルの会計をする。
短くなった襟足を眺めていると、思わず本音が口からこぼれた。
「うん。可愛いっ」
ハルは、クレジットカードの暗証番号を入力していた指をピタリと止めて、「あ?」と軽く睨んできた。
「褒めてるんだってば」
「……あとで覚えとけよ」
「きゃー。こわーい」
いつものように軽口を叩き合っていると、同僚の男性スタイリストがバックヤードからカウンターへやってきた。
「あっ、マナちゃんの弟さん?」
ハルの眉がピクリと動く。
周囲の温度が、数度下がったような錯覚に陥る。
「……違いますよ! 夫です」
同僚はなぜか「え、マジか!」と少し驚き、私たちの顔を見比べた。
「笑い方が一緒だから、姉弟かと思った!」
そして、ちょっと嬉しいことを言ってくれる。
「てか、こんなイケメンが旦那さん!?」
無邪気に感心する同僚に対し、ハルは静かに微笑み返している。
けれど、長年一緒にいる私には分かった。
その瞳の奥が、一切笑っていないことが。



