ねえ、はやく降参してよ。 ――同じ苗字になっても、まだ足りない。甘くて焦れったい心理戦を続ける夫婦。


 マナは、ガーゼケットの下、静かに寝息を立てている。
 暑かったのか、剥ごうとした形跡があった。

 ベッドの脇に座り、その顔を至近距離で眺めた。

 無防備に投げ出された白い首筋、薄紅色の唇。
 目覚めたとき、隣にいない朝がどれだけ続くのか、今は想像すらしたくなかった。

 やり場のない気持ちを、自分の中で強引に愛情へと変え、そっと口づける。

「……っ」

 すぐに目を開けた。

 いつもなら、こういった突然の行動には抵抗の姿勢を見せることが多いけれど、今日は俺の後頭部を撫でるように包み、応えてきた。
 俺のほうも、朝に似つかわしくない手つきで、彼女のいろんな感触を確かめた。


 しばらくそうしていたあと、ゆっくりと離れ、ようやく朝の挨拶を交わす。

「……おはよ」

「……おはよう」

 甘えたような声が愛しくて、もう一度だけキスを落とした。

「朝飯できてるけど、食べる?」

「もしかして、フレンチトースト?」

 香りで察知されていたようだ。

「ん」

「……やったあ」

 手を貸し、身体を起こしてやった。