卒業まで、好きでした。

十一月。

冷たい風が吹き始める頃、ボランティア部は国際車いすマラソン大会の表彰式ボランティアに参加した。

朝早く学校へ集合し、先生から説明を受けて会場へ向かう。

私も敷戸先輩も、それぞれ任された仕事を一生懸命こなした。

表彰式では、選手たちの笑顔や拍手に包まれ、会場全体が温かい空気に包まれていた。

「お疲れさま。」

活動が終わると、先輩が笑顔で声をかけてくれた。

「お疲れさまです。」

それだけの会話でも嬉しかった。

帰る準備を終え、それぞれが帰路につく。

私は少しだけ勇気を出して、先輩に声をかけた。

「先輩。」

「ん?」

「少しだけ、一緒に帰ってもいいですか?」

先輩は優しく笑ってうなずいた。

「いいよ。」

夕暮れの道を二人で歩く。

オレンジ色に染まる空。

落ち葉を踏むたびに、カサッという音が響く。

学校のこと。

ボランティア部のこと。

今日の活動のこと。

たわいもない話をしながら歩いていると、不意に先輩が足を止めた。

「滝尾さん。」

「はい。」

少しだけ真剣な表情だった。

私は自然と背筋を伸ばく。

先輩は少し困ったように笑ってから、静かに口を開いた。

「好きなのは分かってる。」

胸が大きく鳴る。

何も言えなかった。

先輩は続けた。

「でも……ほかの人に言うのも困る。」

その言葉の意味を、私は考えた。

きっと誰かに気持ちを伝えたり、周りに広まったりすることを心配しているんだ。

そう思った。

先輩は私の目を見て、小さく言った。

「ごめんね。」

その一言だけで十分だった。

答えは分かっていた。

去年も、今年も変わらない。

それでも、先輩は逃げずに、ちゃんと私に向き合ってくれた。

私は涙があふれそうになるのを必死にこらえた。

「……大丈夫ですよ。」

精いっぱい笑顔を作る。

声は少し震えていた。

先輩は安心したように、小さく笑った。

「ありがとう。」

それから私たちは、何事もなかったように歩き始めた。

駅へ向かう道で話したのは、学校のことや来週の予定。

さっきまでの空気が嘘のように、先輩はいつも通りだった。

だから私も、いつも通りを演じた。

駅に着くと、先輩は軽く手を振った。

「じゃあね。」

「はい。今日はありがとうございました。」

先輩の背中が少しずつ遠ざかっていく。

見えなくなるまで、その場から動けなかった。

冷たい風が頬をなでる。

気づけば、涙が一粒だけこぼれていた。

叶わない恋。

それでも私は、この人を好きになってよかったと思っていた。

夕焼けに染まる帰り道は、忘れられない一日になった。