卒業まで、好きでした。

土曜講座が始まって、一か月ほどが過ぎた。

毎週土曜日になると、少しだけ早起きをして学校へ向かう。

最初は緊張していた講座も、少しずつ慣れてきた。

それでも、分からない問題にぶつかることは何度もあった。

そんなとき、私は決まって敷戸先輩のところへ行った。

「先輩、ここ教えてもらってもいいですか?」

「もちろん。」

そう言って笑う先輩は、いつも丁寧に教えてくれた。

答えだけじゃなく、「どうしてそうなるのか」まで教えてくれる。

だから、先輩に教えてもらうと、不思議なくらい頭に入ってきた。

「ありがとうございました。」

「また分からなかったら聞いてね。」

その言葉が嬉しくて、私は何度も頷いた。

講座が終わる頃には、自然と話せるようになっていた。

ある日、講座の帰り道。

「質問したいことがあったら、LINEでもいいよ。」

そう言って先輩がスマートフォンを取り出した。

「本当ですか?」

「うん。」

私は少し緊張しながらQRコードを読み取る。

画面に表示された名前。

敷戸純也

その名前を見ただけで、胸が少し高鳴った。

家に帰ると、すぐにメッセージを送った。

『今日はありがとうございました。滝尾いのりです。これからよろしくお願いします。』

送信ボタンを押した瞬間、少しだけ恥ずかしくなった。

ちゃんと届いただろうか。

変な文章じゃなかったかな。

何度も画面を開いては閉じる。

でも、既読はつかない。

その日が終わっても、返事は来なかった。

次の日も。

その次の日も。

「忙しいのかな……。」

少しだけ寂しくなった頃。

通知音が鳴った。

『こちらこそよろしく!返信遅くなってごめんね。』

たった一文だった。

でも、その一文が嬉しくて、思わず笑ってしまった。

それから私は、分からない問題があるたびにLINEを送るようになった。

だけど、返事はいつも二日後くらい。

最初は、「嫌われてるのかな」と不安になった。

でも、返ってくるメッセージはどれも優しかった。

『ここはこう考えると分かりやすいよ。』

『土曜講座でまた説明するね。』

『頑張ってるね。』

短い言葉なのに、その一つひとつが嬉しかった。

私は返信が来るたびに何度も読み返していた。

親友には呆れられた。

「また見てるの?」

「……うん。」

「好きなんじゃない?」

その言葉に、私は慌てて首を振る。

「そ、そんなことないよ。」

そう答えたものの、本当はもう気づいていた。

土曜日が楽しみになっていること。

LINEの通知が気になること。

先輩が笑うだけで嬉しくなること。

この気持ちは、きっと憧れなんかじゃない。

私は少しずつ、敷戸純也という人に恋をしていた。