四つ葉の栞

本屋を出た帰り道。

美紗樹は足を止め、彼氏の方を向いた。

「話したいことがある。」

ゆっくりと手話で伝える。

『別れたい。』

彼は驚いた表情を浮かべた。

『どうして?』

美紗樹は少しうつむき、言葉を選んだ。

『今日、本屋で「本なんてつまらない」って言ったよね。』

『あの場所は、私にとって特別なの。』

『たくさんの思い出があって、大切な人と出会った場所。』

『好きなものを否定されるのが、とても悲しかった。』

『これから先も、私は本を好きでいたい。』

『だから……ごめんなさい。』

彼はしばらく黙っていた。

そして、小さく手話を返す。

『別れたくない。』

その言葉に、美紗樹は胸が痛んだ。

それでも、静かに首を横へ振る。

『もう決めたの。』

『ごめんなさい。』

長い沈黙のあと、彼は小さく笑った。

『分かった。』

『美紗樹が決めたことなら、応援する。』

二人は最後に「ありがとう」と伝え合い、それぞれ別の道を歩き始めた。

その頃、本屋では――。

蒼もまた、一人の女性と向き合っていた。

彼女は申し訳なさそうに目を伏せる。

『ごめんね。』

『私、好きな人ができたの。』

蒼は少し驚いたものの、責めることはしなかった。

静かに笑みを浮かべる。

「教えてくれてありがとう。」

「幸せになってね。」

その言葉に、彼女の目には涙が浮かんだ。

「蒼くんも、幸せになって。」

そう言って二人は別れた。

帰り道、蒼は夕焼けに染まる空を見上げる。

「これで、よかったんだ。」

そうつぶやいたものの、心の中には、ずっと忘れられない一人の笑顔が残っていた。

一冊の本を大切そうに抱える、美紗樹の笑顔が。