追放先で再会した初恋の男は、罪深い私を愛し続ける 〜断罪令嬢エリザベートの初恋回帰〜

「地区から出なければ何をしてもいいのよね……」
「あぁ」
「逃げたりしないから安心してちょうだい。確認は三日に一度でも多いぐらいよ」

「そうか。なら明日また来る」

ベリルのちぐはぐな答えにエリザベートは訝し気に振り返った。

「――だから、放っておいて構わないと言ってるの。私は逃げたりしないわ」

だからそっとしておいて欲しい。
気にかけられると心がざわつくから。

しかしベリルは軽くあしらうように口端を歪める。

「この地区を何も知らないのにか?まぁ、お前は一人でなんでも出来るだろうな。昔から器用だった」

幼少期、ベリルと知り合い、フランドール家の別荘を抜け出して過ごした時間は新鮮だった。

ベリルの一家が営む養鶏所で様々なことを経験した。

井戸から水を汲む方法、パンを焼くにはどうすればいいかはベリルの母が教えてくれて、畑の耕し方や鶏の締め方は父のジルから教わった。

二人とも初めは「やめた方がいい」と血相を抱えてエリザベートを止めたが、ベリルが「いいじゃん。一緒にしようぜ」と手を引いてくれたからエリザベートの世界は広がった。

自分で出来ることが増えて、そしてあの家で自分の矜持を守るためにはどうすればいいか必死に考え、生きてきた。

その経験は辺境でも十分に通用するはずだ。

「……自分でこの土地について調べるわ。仕事も探すから大丈夫よ。何も出来ないご令嬢じゃないって知っているなら好きにさせて……その方があなたの仕事も減るわ」

しかしベリルは許さなかった。

歩み寄りエリザベートの長い銀髪を指先で梳きながら言う。

「……俺を遠ざけようとしても無駄だぜ。なにより規則だ」

「……でも、」

「明日は村を案内する。俺に寝込みを襲われたくなけりゃ鍵かけておけよ」

問答無用といった調子で告げられ、髪に触れていた指先は離れていく。

そして気怠げな雰囲気を纏ったままベリルは平屋を出て行ってしまった。