――翌日、起床したのはまだ日が差し始めた頃だった。
昨日は何かを口にする気が起きずそのまま寝てしまったが、さすがに今朝は空腹になって簡単なスープを作った。
その時、平屋にある道具を確認した時にエリザベートはあることに気付いた。
あればいいと考えていた道具が一通り揃っていたのだ。
それは妹のヒストリアが使っていたものなのだろうが、妹は追放時、身の回りのことは何一つ満足にできなかったはず。
王都で妹と再会した時に、雰囲気が変わったと感じていたが、この場所でヒストリアなりに努力したのだろう。
使い込まれた道具を見て、エリザベートは導き手が違えばこうも違うのかと独り言ちた。
自分が見切りをつけていた妹に、別の人間が手を差し伸べていた。
その痕跡を感じ、自分の選択が誤っていたのだろうかと考える。
もしもやり直せていたら……しかし、やはり何度考えてもあの当時の家では希望などなかった。
結末は同じだ。
エリザベートはヒストリアを蔑み、大聖女という大役から引きずり下ろしていただろう。
朝食を摂って暫く、片づけを終え床を履いていた時にベリルはやってきた。
扉をノックされる音に気付き、重い気分で扉を開けるとその手には赤いストールがあった。
「その恰好じゃ寒いだろ」
「でも……」
新品同様にも見えたそれを差し出されエリザベートは口ごもる。
「余りもんだ。それに風邪ひくだろ。言っとくが王都と違ってこっちはやぶ医者しか居ねぇからな。世話になりたくなけりゃ受け取れ」
そう言って胸元に押し付けられ思わず受け取ったものの、そのストールからは甘い香の匂いが鼻を掠めた。
「ありがとう……」
ストールを首に巻いてみると温もりと共に香りが弾ける。
そのことに様々な憶測が湧いて少しだけ寂しい気分になった。
だからというわけではないが、気忙しくもベリルに対し訊ねてしまう。
「――ねぇ、昨日の話だけど……やはり辺境伯に聞いてみることは出来ないのかしら……」
もう一度だけ確認しようと心に決めていた問いだ。
するとベリルが一瞬、顔を歪めた。
「そんなに俺が嫌か?」
不満を露わにされエリザベートの視線は足元へ落ちる。
親切にしてもらったばかりだが、しかしこれから先のことを考えると確かめておかねばらない。
「……あなたは私を見て、辛い記憶を思い出さないの?」
緊張し、恐る恐るといった話し方になっていた。
昨日は何かを口にする気が起きずそのまま寝てしまったが、さすがに今朝は空腹になって簡単なスープを作った。
その時、平屋にある道具を確認した時にエリザベートはあることに気付いた。
あればいいと考えていた道具が一通り揃っていたのだ。
それは妹のヒストリアが使っていたものなのだろうが、妹は追放時、身の回りのことは何一つ満足にできなかったはず。
王都で妹と再会した時に、雰囲気が変わったと感じていたが、この場所でヒストリアなりに努力したのだろう。
使い込まれた道具を見て、エリザベートは導き手が違えばこうも違うのかと独り言ちた。
自分が見切りをつけていた妹に、別の人間が手を差し伸べていた。
その痕跡を感じ、自分の選択が誤っていたのだろうかと考える。
もしもやり直せていたら……しかし、やはり何度考えてもあの当時の家では希望などなかった。
結末は同じだ。
エリザベートはヒストリアを蔑み、大聖女という大役から引きずり下ろしていただろう。
朝食を摂って暫く、片づけを終え床を履いていた時にベリルはやってきた。
扉をノックされる音に気付き、重い気分で扉を開けるとその手には赤いストールがあった。
「その恰好じゃ寒いだろ」
「でも……」
新品同様にも見えたそれを差し出されエリザベートは口ごもる。
「余りもんだ。それに風邪ひくだろ。言っとくが王都と違ってこっちはやぶ医者しか居ねぇからな。世話になりたくなけりゃ受け取れ」
そう言って胸元に押し付けられ思わず受け取ったものの、そのストールからは甘い香の匂いが鼻を掠めた。
「ありがとう……」
ストールを首に巻いてみると温もりと共に香りが弾ける。
そのことに様々な憶測が湧いて少しだけ寂しい気分になった。
だからというわけではないが、気忙しくもベリルに対し訊ねてしまう。
「――ねぇ、昨日の話だけど……やはり辺境伯に聞いてみることは出来ないのかしら……」
もう一度だけ確認しようと心に決めていた問いだ。
するとベリルが一瞬、顔を歪めた。
「そんなに俺が嫌か?」
不満を露わにされエリザベートの視線は足元へ落ちる。
親切にしてもらったばかりだが、しかしこれから先のことを考えると確かめておかねばらない。
「……あなたは私を見て、辛い記憶を思い出さないの?」
緊張し、恐る恐るといった話し方になっていた。



