短編集〜甘々、逆ハー、無自覚、美少女、ヤンデレ、独占欲、クール、いじめ、溺愛、嫉妬〜

 気づくと、
 俺は見知らぬ世界に立っていた。

 どういうわけか、
 異世界へ転移してしまったらしい。

 目の前では、
 高さ四~六メートルほどの巨大な戦闘兵器が町を襲い、
 建物を次々と破壊している。

 悲鳴が響き、人々は逃げ惑っていた。

「戦うしかないのか……」

 俺は小さくつぶやく。

 敵を操縦しているのは同じ人間だ。
 できれば戦いたくない。

 しかし、このままでは町が壊滅してしまう。

 俺の名前はカンバーツ。

 訓練校を卒業したばかりの新人戦闘兵器パイロットだ。

 俺は秘密基地へ全力で駆け出した。

「間に合え!」

 息を切らしながら格納庫へ飛び込む。

「どこだ……?」

 辺りを見回すと、
 見慣れた緑色の戦闘兵器が目に入った。

 全高約五メートル。
 俺専用の愛機だ。

「これなら戦える!」

 コックピットへ乗り込み、
 起動ボタンを押す。

 緑色のライトが点灯し、
 機体がゆっくりと立ち上がった。

 俺は町へ向かい、
 敵部隊の前へ立ちはだかる。

 外部スピーカーをオンにして叫んだ。

「町の平和を脅かす悪党ども! ここから先へは行かせない!」

 敵兵たちが笑う。

「何だ、あいつ?」

「一人で俺たち全員と戦う気か?」

「正気とは思えんな」

 俺は思わず言い返した。

「集団で町を襲ってるお前たちの方が、
よっぽど正気じゃないだろ!」

「生意気な奴だ」

「すぐに返り討ちだ」

 敵が一斉に動き出した、
 その時だった。

 ドンッ!

 緑色のカエル型戦闘兵器が横から飛び込み、敵機を拳の一撃で吹き飛ばした。

「気が利かないのね」

 聞き覚えのある声だった。

「その声は……パロラーチョ!」

 パロラーチョは黒に近い茶色のボブヘアーに茶色の瞳を持つ少女パイロット。

 腕は一流だが、口はかなり悪い。

「こんなこともできないなんて、ブスね。」

「その言葉の使い方、絶対違うだろ。」

「うるさい! 黙れ!」

 彼女は意味をよく理解しないまま言葉を使う癖があった。

「気持ち悪い」

「それ、俺に言ってる?」

「は? イミフ」

「いや、意味不明なのはそっちだから。」

 会話がまったく噛み合わない。

「もっと普通に話せないのか?」

「いじめてないし」

「そういう話じゃない!」

「何で察してくれないの?」

「何を?」

「空気で察して」

「だから何を察すればいいんだ?」

「だからブスなの」

「全然つながってない!」

 頭が痛くなってきた。

「君、本当に何が言いたいんだ?」

「あなたと大違い」

「もう理解を諦める」

 俺は基地へ帰ることにした。

 しかしパロラーチョは後ろからついてくる。

「逃げんな!」

「逃げてない! 本部へ帰るだけ!」

「イミフ」

「だから帰るだけだって!」

「あなたってブスね」

「その悪口しか知らないのか!」

「いいよ、怒って」

 売り言葉に買い言葉とは、
 このことだった。

 本部へ戻ると、
 上司のヘフェが待っていた。

「おかえり、カンバーツ」

「ただいま帰りました」

「パロラーチョ君、挨拶は?」

 しかしパロラーチョは耳をふさいでいる。

「パロラーチョ君!」

「は?」

「上司にはきちんと挨拶しなさい」

「うるさい」

「『うるさい』じゃない!」

「あなたってブス」

「それ以外に言えないのかね?」

「ロボット」

「語彙が少なすぎる!」

 ヘフェはため息をつく。

「それに、この前はアルバイトを無断欠勤したそうだね。
それだけじゃない。
国語、
数学、
理科、
社会、
英語、
全部赤点だったそうじゃないか」

「黙れ」

「人の話は最後まで聞きなさい!」

 今日も二人は言い合いを始めた。

 俺は苦笑いしながら、
 その場を離れる。

 向かう先は、
 この世界で「生き残った女の子」と呼ばれている人物のもとだった。

 彼女こそ、この異世界の謎を解く鍵を握っているらしい。