短編集〜甘々、逆ハー、無自覚、美少女、ヤンデレ、独占欲、クール、いじめ、溺愛、嫉妬〜

 いじめは、
 決してなくならない。

 人がいる限り、
 いじめは形を変えて繰り返される。

 だから、
 この世界には「いじめ殺し」が存在する。

 いじめを繰り返した者を裁き、
 その命を奪う処刑人。

 それが、この世界で認められた仕事だった。

 一人の男が、
 今日も会社へ向かう。

 学生時代から、
 彼はいじめられ続けてきた。

 学校を変えても、
 就職しても、
 環境は何も変わらない。

 気づけば、
 彼を苦しめた人間は次々と命を落としていた。

 すべて「いじめ殺し」の手によって。

「また一人……。」
 男は複雑な表情を浮かべる。

 自分を苦しめた相手とはいえ、
 死んでほしいと願ったことは一度もなかった。

 それでも、
 いじめっ子たちは裁かれていく。

 やがて男は会社へ行くことをやめた。

 誰とも関わらなければ、
 もう傷つかなくて済む。

 そう思い、
 部屋へ閉じこもるようになった。

 そんな男を、
 高層ビルの屋上から見下ろす少女がいた。
 私はブイオ。

 異世界では「いじめ殺し」と呼ばれる処刑人だ。
 いじめを行った人間を裁くこと。

 それが私の仕事だった。

 人間界では許されない仕事でも、
 この世界では正式に認められている。

 私たちが裁く相手は、復讐のためではない。

 これ以上、新たないじめの被害者を生まないためだ。

 私の肩には、
 一匹のリスが乗っている。
 名前はアスコルターレ。
 人の言葉を話す、不思議な相棒だ。

「今日は手を出さないのか?」
 アスコルターレが尋ねる。
「今回は見学だけ」

 今日の標的は、
 別のいじめ殺しが担当する。

 もし私が姿を見せれば、
 顔を覚えられてしまうかもしれない。

 余計な騒ぎになるくらいなら、
 仲間に任せたほうがいい。
「女らしくないな」
 リスナーがからかう。
 私はため息をついた。

「男とか女とか、そういう言葉は嫌い」
 会社で働いていた頃も、
 何度も「女だから」と決めつけられた。

 そのたびに傷ついてきた。

 だから性別で人を判断する考え方は好きになれない。

「使命だけは忘れるな」
「分かってるわよ」

 私たち「いじめ殺し」は、
 人の負の感情を魔力へ変える。

 私の属性は雷。

 炎、水、風、氷など、さまざまな属性を持つ仲間が存在する。

 そして私たちを束ねる存在――それが闇の魔王だ。

 任務を終えた私は、
 ビルの屋上から飛び降りた。

 もちろん、人間ではない私に落下は問題ない。

 着地した先で、
 一人の青年が待っていた。

 長い前髪で目元が隠れた、
 不思議な雰囲気の青年。
 彼は闇の魔王の息子だった。

「来てくれたんだね」
「偶然よ」
「本当は僕に会いに来たんじゃない?」
「まさか」
 青年は少しだけ笑った。
「君が噂のブイオなんだね」

「……たぶん」
 有名だと言われるのは、どうも苦手だった。

「ずっと会いたかった」
「どうして?」
「友達になりたいから」
 予想外の返事だった。

「それと、一緒にデートしない?」
「初対面の人とデートする趣味はないわ」
 私はきっぱり断る。

 異性だからではない。
 知らない相手だから警戒しているだけだ。

「事情は知らないけど……」
 私は青年をまっすぐ見つめる。
「その誘いは、お断りします」
 青年は少し寂しそうに笑ったが、
 それ以上引き止めることはなかった。